一首目 花と言えば ページ3
走行中の車の窓を開けたら、桜の花弁が一枚せっかちに入り込み真新しいグレーの制服をまとった膝に落ち着いた。
「廉、学校着くよ。準備しなさい。」
「うん」
母親に促され聴いていた春歌の再生を三角にし、イヤホンをケースにしまう。
「あんまり大きい音で聴いてるの耳が悪くなるわよ。あんたの敵なんでしょ。」
分かってる。
だから俺の適正音量は普通の人には少し小さいぐらいだ。
ドアを開けて外に出ると、膝の桜は落ちていった。
四月の六日、入学式シーズンに漏れず都立の進学校
聖櫻高等学校は入学式に向かう学生と家族で溢れていた。
廉もその一人だ。
いくら大阪から引っ越してきて間もないとはいえ自宅は小学生のころ住んでいた土地なので、昔の知り合いが一人ぐらいはいそうなものだ。
そう思いながら、何かに導かれるようにある一点に釘付けになった。
樹齢千年はありそうな桜の大木。
その足元に一人の男子生徒が立っていた。
聖櫻の特徴的な制服を着ていたから絶対うちの生徒。
後ろ姿しか見えないけれど、その人はスラッとしたモデル体型でここにいる誰よりも淡いピンクの桜が似合う。
どこかで会ったことがあるような、でも知らない。
二人の間だけは花弁がゆっくりとスローモーションに降って見える。
彼が小さく手を上げた時、頭に花弁が舞い降りた。
友達を見つけたのか、桜の彼の口角が少し上がった。
ほわっと心が熱を持つ。
「ん……れん…廉！」
「うわぁ！」
父親が心ここにあらずな廉に声をかけた。何度もかけたのだろうだいぶ近い。
「お前、クラス分け見に行かなくていいのか？」
「うん、行ってくる。」
もう一度、大木に目線を移すともうそこに彼はいなかった。
あの人はどこのクラスの一人なんやろ？
そもそも同学年なん？
名前も分からない廉にはまだ彼にはたどり着けそうもない。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
