十八首目 天才の代償 ページ20
畳に乗る神を眺めていたら、肩を誰かに叩かれた。
相手は細身で黒シャツにジャケットが良く似合うおじさん。
あっ、この人知ってる。
東京さくら会。
かるたの名門で神の所属会。その会長さんで、先生の大学の同期の神楽榊先生。
さっき方正先生が、相変わらず実年齢より見た目若くて腹立つとぼやいてたから良く覚えてる。
「永瀬くんだよね。」
「そうですけど…」
「お話いいかな？」
好きなの選んでいうのに甘えて、コーラを片手にホールの外のベンチに腰掛けた。
てか、さくら会の会長さんが何で俺に。
変な緊張でガチガチやねんけど。
その横で、優雅にブラックの缶コーヒーを一口啜る。
それから、「勇太ね」
と前置きしてしゃべり始めた。
「勇太のお婆ちゃんは五度女性選手のトップになった有名な人でね、お父さんもかなり強い選手だったんだよ。
今は、二人とも一線では取ってないけどね。
そんな、生まれた時からかるたがある環境だったからか、小一でこの会に来た時にはもう同年代の子達とは頭ひとつもふたつも抜けていた。」
「俺、始めたばっかりなんですけど、神が凄いの分かります！」
「おっ、君は見る目があるね。
あの子は祖母譲りで耳が良くてね。
私は「才能がある」って言葉は嫌いだが、あの子はつくづくかるたの神様に愛されていると思うよ。
でも、その反動で同年代の子には馴染めなくなってしまってね。
ほら、あの子大人しいとはちょっと違うけど、はしゃいだり、子供たちの輪に入っていったりは自分ではしないだろ？」
確かに学校でも俺以外とは交わしても一言二言。
勝手に神は人見知りなんだって思ってた。
「私は、羨ましいがったり、拒絶したりする子供の刺々しい部分から勇太を守れなかった。
子供らしさを閉じ込めてしまった。」
神のひとりぼっちの姿が、想像できてしまうのが苦しい。
先生は急に俺の方を見て続けた。
「でも、君と出会って勇太は少し変わった。
君の前では、あの子は年相応で無邪気に振る舞える。それが嬉しくて、嬉しくて、、」
「ごめんね、年甲斐もなく感情的になってしまった。」
神楽先生、泣きそう、、
もう、堪らなくなくて、言葉が勝手に出た。
「あの！
俺！これからも神とかるたやってていいですか？
俺も神が楽しそうにしてる顔大好きです！」
「本当かい、、？」
「はい！」
先生の表情がパッと明るくなる。
「ありがとう」
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
