十七首目 神の大会 ページ19
「大会、来てくれるの!?」
「うん。」
月曜日にそのことを神に伝えると、驚いて跳び跳ねて、嬉しそうにも恥ずかしそうにもした。
「じゃあ、いつもよりも頑張らなきゃ。」
来る日曜日、俺はいつもの区役所の前で方正先生の車に拾ってもらって会場に向かった。
錦糸町の墨田区総合体育館は良く大会で使われるんだって。
会場に入ると、色んな人に挨拶に行く先生の後ろにくっついてまわった。
人見知りには大人、大人、大人でちょっと辛い。
「そろそろ試合開始の時間だろう」
そう言って手招きする先生について閉じられたホールの中に入った。
暑い。
暖房の効きすぎ？
いや、違う人の熱気だ。
A級、B級合わせて130人ほどから発せられる熱が尋常ではない。
「ほら、あそこにいるよ」
先生が指した方を見ると、神がいた。
対戦相手は高校生ぐらいの女の人。
その目は七月の和室のそれ。
駄目だ、近くで見てたら神の気が散っちゃう。
俺はそっと遠くに座った。
あっという間に神は一回戦を勝ちきって、二回戦、三回戦、四回戦と上がっていった。
三回戦なんかは会場で一番早く終わってた。
その間、神は試合が終わると同じ紺に桜の花弁をあしらったTシャツの集団のもとに戻って、じっと、ただじっと小さくなってた。
集中し過ぎているんだと思う。
準決勝中に近くに札が飛んできた。
一枚一枚、拾いながら近づいてきた彼に目の前の札を手渡す。
「はい、」
「ありがとう。」
ちょん
と、札の上で親指同士が触れる。
ほんの一瞬で離れて行ったけど、俺はね鼓動の波がひとつだけおっきく波打ったよ。
会話とか接触はそれだけだった。
・
・
・
「廉！」
決勝が始まる直前に神が駆け寄ってきた。
「次は僕の見えるどこにいて。」
「あぁバレてた？」
「めっちゃバレてる。遠すぎ。」
「分かった。神の視界にガンガン入るとこにおる。」
神、満足そう。
「決勝、ほんま頑張ってな。」
「うん…ねぇ、勝てるかな…」
勝つと言われている人のプレッシャー。
膨れ上がる期待が神よりも大きな荷物になって、好きなように戦えない。
そんな嘆きに感じた。
「そんな、「選手方は着席してください。」」
俺の言葉は、呆気なく着席を促すアナウンスに消された。
名残惜しそうに手が離れていく。
このままじゃ…
「勝てる！」
そう背中に叫ぶと、神からはグッドサインか返ってきた。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
