十六首目 じっくり歩むということ ページ18
無事、おかんに了解を得ることができて、方正先生の前に座った。
少しでも聞きやすい方と読手側に座らしてくれてけれど、俺にはまだその違いはよくわからない。
座っただけで感じた。
先生の「東京の熊」たる訳を。
一つ一つの所作を選択を試されているかのような圧力。
こんな対戦お願いしなければよかった。
そう思ったけど、もう引き返せない。固まりそうな足と指先を奮い立たせて、一枚一枚を追いかけた。
ガムシャラに払った。それなりに試合になったけれど、先生にが俺に合わせているのが分かったから、満足感は高くない。
一枚も取れなくたって、札すら触れられなくなっていいから手を緩めないでよ。
「君、凄いね。」
札を数え終えてすぐ、隣で試合をしていた大学生がそう言ってきた。
「はぁ、、？ありがとうございます。」
「何がだって顔してるね。
本当に凄いよ、方正先生と初めて試合して手が出なくならなかった子初めて見た。」
その人が言うには、先生は例え始めたばかりの子でも醸し出る威圧感だけは緩めないのだそうだ。
それが理由で慣れないと手すら出せない。札の上に手さえ出せれば勝てるようにしてるのに。
「むしろ圧増し増しで隣でも怖かったっすよ、先生。」
「バレてたか。」
殺気の籠った険しい表情が嘘のように、先生はまた大きな口を開けて笑った。
「廉くん。」
不意に名前を呼ばれて背筋が伸びた。
「焦ってはいけないよ。」
あぁ、この人には隠せない。
及ばないと分かっていても、空しいほどぱっくり口を開ける神との差に焦っていたことを見透かされてる。
「かるたは焦ってどうこうなるものじゃない。
じっくり自分と向き合い、耐えなさい。
そうすれば、いつか君ならあの子に並べるよ。」
「神に？」
「そうだとも。」
そう言われたら、耳まで熱くなって、全身の血が沸騰しそうで、冷水をかけられたみたいに吹っ切れた。
俺は神みたいになりたい。
「そうだよ、廉くん、来週の吉野会大会B級見にこないかい？」
「神も出ますか？」
「君の友達もエントリーがあったよ。」
「行きたいです。」そう答えようとしたが、それは隣の大学生に掻き消された。
「えっ！神童やっぱ出るの!?」
そう言うとオーバーに頭を抱えた。
神は神童という形容されるほどの存在なんだ。
「俺の昇級が…」
踠く姿が面白くて思わず、ぷっと笑った。
「で、どうする？」
「行きます！」
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
