十五首目 無性 ページ17
学校でも二人はかるたの話ばかり。
昨日はどんな人と対戦した。勝った、負けた。
あの歌が苦手だ、得意だ。
一方的に神に聞いてもらってる部分も多いけど、これが二人を繋ぐ太いパイプ。
俺は週に二回、神はほぼ毎日のように学校終わりにかるた会に行く。
毎回、電車を乗り継いで通う後ろ姿が大人らしく思えたりする。
チャリで並走したこともあるけど、当然差はすぐに開いていってしまう。どこか俺たちみたいだ。
今日も神を見ていると、会の日ではないけど無性にかるたをしたくなった。
家で宿題の算数ワークに走らせいたペンを置いて、机の上そのままで自転車にまたがった。
父さんは単身赴任、母さんは珍しく残業、弟はその影響でまだ保育園。
十中八九おかんには怒られるだろうけど、今すぐ誰かと対戦がしたくてあの場所へ急いだ。
区役所の駐輪場に着いた時にはもう真っ暗で、街のネオンと役所の職員が灯す蛍光灯が精を出していた。
八階の和室。
そこがうちの会がメインで使う練習場所。
こんな日に俺が行ったら会長はどんな顔をするだろうか。
怒られるかな。
それも仕方ない。
エレベーターホールから和室はすぐで、話し声なんかが聞こえるから、今は試合中じゃないみたい。
「失礼します…」
その声に一斉に視線が俺に注がれた。
当たり前だ、金曜日は高校生以上の大人しかいないから小学生がいるのは何かの間違えだと皆思う。
今更ながら気まずさが圧勝だ。
「どうしたの廉くん。」
俺に影を落とすのは、方正先生。
この会の会長で「東京の熊」で界隈では有名らしい。
体も熊みたいで、いつもどっしりと中心で構えていながらも穏やかな微笑みを絶やさない人という印象がある。
「先生、この子確か小学生ですか？
どうしたの今日は小学生はいないよ？」
そうじゃない。
そんなこと分かってる。
心中では突っ込めても、口には出せない。
「あの、俺…なんか、かるたやりたくて…
来ちゃいました…」
そう言うと、頭の上から方正先生の爆笑が降ってきた。
「廉くん面白いね！
でも生憎、今日はC級以上しかいないんだよね。」
やっぱり急に来ても駄目だったかな。
「お母さんには言ってきたの？」
追い出されるかもしれない。そう思いながら、小さく首を横にふった。
すると先生はスマホを取り出して、操作したそれを俺に手渡して言った。
「これで、お母さんに電話しといで。
そしたら、私が相手だよ。」
「はい！」
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
