十二首目 かるたとの出会い ページ14
梅雨も逃げた七月の頭のこと。
王華小学校には四年生以上が対象の恒例行事がある。
「王小かるた大会」と称したそれは、少ない枚数で行うかるたの校内戦。
クラスごとに出る優勝者には賞状と景品がもらえるからなかなか皆本気になる。
小学校の授業の一つなので、ユルい競技かるたというところか。
でもなんだかんだ楽しみにしている。
内心、景品に引かれた現金な小四の一人。
あれは学校の創立記念日で平日が休みになった日のことだった。
この日初めて神の家に遊びに行った。
彼の両親は仕事で留守。昼を過ぎればお手伝いさんも仕事を終えて帰宅する。
こんなに大きい家に二人ぼっち。
人の家ながら無い羽が伸びるような解放感を感じた。
それとこの胸の高鳴りは、きっと小匙ほどの緊張からくるものだ。絶対。
ゲームにも少し飽きてきた。
ジュースを取りに行くと言ってソファーを立った神につられて俺もコントローラーから手を離す。
キッチンに向かう後ろ姿を何気なく目で追っていた。
「かるた札やん」
「ん？それ？」
アイランドキッチンの外側のスペースに学校で使ったことがある札の箱を見つけた。
「かるた、やったことあるん？」
「ちょっとだけね。
かるたをやる会に入ってるんだ。」
確か、先生がピアノやサッカーなんかの習い事みたいにかるたが出来る所があるって言ってたっけ。
市内にも一つあるとか。
それを聞いて俺はなんだか興奮気味になった。
「じゃあ、勝負しよう！」
「まじ？」
「勝ったらポッキー一人占め！」
ジュースを片す手が止まった神に対して、まだ未開封の箱を掴んでそう提案した。
「ポッキーね、いいよ」
そう言う神は満面の笑みだった。
畳の部屋でそれぞれ25枚を並べる。
イキって50枚でいいと言ってしまったけど、実は一度も50枚ではやったこと無い。
完全に盛った。
暗記の制限時間が迫るに連れてじわじわと体が熱くなる。
耳に入る読む人の声は聞き慣れた先生のそれではなくて、違いを感じた。
神はこのテノールの声が心地いらしい。
俺にもそれが少し分かる。
「神、手加減無しや。」
「手加減なんてしてないよ？」
「なんかやりずらそう。」
数枚読まれて手加減されてると感じた。
なんだか手を出そうとして止めてる感じが否めない。
「なんかこう、もっとぐいぐい来て！」
「分かった、分かった」
そう言うと小さく息を吸った。
そしてはいた時それまでの柔らかさが消えた。
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四季(プロフ) - マジックアワーさん» ありがとうございます！ (2022年11月30日 23時) (
レス) id: 10b371ccd5 (このIDを非表示/違反報告)
マジックアワー - 百人一首いいですよね。話の続き楽しみにしてます。 (2022年10月23日 10時) (レス) @page9 id: 461445c92c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：四季 | 作成日時：2022年10月18日 2時
