♂/切ない/病室（not病気ネタ） ページ5
交通事故に巻き込まれ、
意識不明の重体となったのが５年前。
外傷が治ったのに意識が戻らなくなって３年程前。
「キミは一体、どんな夢を見ているの？」
表情豊かで、責任感があって、凛々しくて、
でも、空気を読むのが少し下手なのが玉に瑕で。
デートでは嫌いなスカートや苦手な化粧をしてみたり、
そんな見栄を張る姿だって愛おしい。
「とても寂しいんだ」
何十回、何百回、
君を訪れは話しかけても返事や反応はない。
まるで世界は彼女を残して廻る。
そして時間は僕らを残して進む。
「キミがいない日々はとても空虚なんだ」
周囲に取り残されているような、僕らが勝手に残っているような、
最近そんな不思議な思考に、感覚になる事が多い。
ナイーブ、というのだろうか？
なんか違う気もするけれど、まぁ良いか。
「でも夢ですらキミと逢えないんだ」
目を閉じて現実を遮断する。
子供染みた小さく、無駄な抵抗。
そんなことを繰り返せば癖になる。
…本当、とんだ悪癖がついたもんだ。
そう呟き、苦笑いを零す。
彼女の髪を優しく、梳かすように撫でる。
心拍数を知らせる音だけがこだまし、鼓膜を刺激する。
「はやく声をきかせて」
久しく聞いていない僕の好きな声が早く聞きたい。
その声で「おはよう」と言って？
目を見開いて、状況整理の出来ていないアホ面を僕に見せてよ
そして、怒ってやる。叱ってやる。
寂しいかった、と。遅刻しすぎだ、と。
愚かだって言われても、諦めろって言われても、
僕は彼女を待つことを止めないし、起きる希望を捨てないだろう。
それが今僕に出来得るキミへと捧ぐ、最高の愛です。
起きる気配のない彼女の手先にキスをした。
＿＿捨てられないアイ
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作者名：秋花火 | 作成日時：2015年12月3日 20時
