♂/昆虫標本/恋愛 ※虫苦手注意 ページ16
「ハエとアブはぶっちゃけ、同じなんだよ。
どこで区別してるか、というとハチに近いか否か。曖昧だろ？」
昆虫の標本を作りながら彼女は笑う。
「チョウとガも綺麗か否か、て分け方なんだよな。学者つーのは、そういう細かくするべきとこが雑なんだよ」
「で、なんでハエの話なんですか」
俺はツッコまざる得なかった。
何が好きでハエとアブの話をされねばならぬのだ。
「ハエはねー、未だ種類が把握されてない種なんだよ。小さい上に素早いから、なんだけど」
「…ハエはハエでいいでしょ」
「まぁ、羽の形や体色で判定できないから其の発想は好きだよ。面倒なときあるし」
彼女は顕微鏡で虫を覗きながらも、口は止めない。
…器用だな。
「でも、やっぱり楽しいんだよ。誰も見つけてない種があるって」
「自分で名前でも付けたいんですか？」
「いや。新しい種だよーって発表して有名になりたい」
動機が不純ですね。
そう言えば大笑いして「きっかけなんてこんなもんさ」と答える。
確かに、１つの世界を知るきっかけや、ハマるきっかけは大抵不純だ。
かく言う俺も彼女と話たくて此処に居る。
「で、どうしてハエの話を？」
「丁度、標本にしているからだね」
「そうですか」
彼女の部屋には毒瓶が並ぶ。
その瓶の中には未だ虫が入ったまま。
捕るスピードと標本にするスピードが比例しない証拠だ。
彼女の部屋に入り浸るようになってから、標本が異様に増えた気する。
以前の標本ペースは知らないが、結構な量の標本が所狭しと並べられ、積まれる。
「そういえば、トンボの標本は作ら無いんですね」
「トンボはなぁー…捕まえるのが大変、とかもあるが一番は標本までが面倒。なんだよ」
そこからまたトンボについて語る。
この人の知識量はどれ程あるのだろうか…
世間一般では必要の無いものばかりではあるが。
「標本にするペース、多いですよね」
ふと漏らした言葉。
その言葉に彼女は過剰なくらい反応した。
まさか。いや、まさかな。
「俺、Aさんと居れて嬉しいです」
「キ、キミはッ…！」
赤面。まさに真っ赤。
ニヤリと笑えば、魚のように口をパクパクさせ、言葉を無くす。
言葉も出ない、が正しいか。
「暖かいですね」
「〜〜〜ッ！」
やっと俺の方を向いた彼女は、涙目だった。
また一段と、俺の中で勝ち誇った気持ちが大きくなる。
今日の虹は綺麗だな。
__________五畳半の狭い空間で雑学を
♀/冬/恋愛未満/絵の具→←性別不詳/謳い文句気味/宣伝広告
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作者名：秋花火 | 作成日時：2015年12月3日 20時
