♂/幽霊/切なめ ページ10
僕の彼女は浮いている。
毎日、僕の隣で四六時中。
２年前、幽霊となって僕の前に現れた。
「周囲から浮いていたけど、まさか本当に浮くなんてな」
そう言えば、苦々しい彼女は表情をした。
幽霊となった彼女が地面と接触することはほとんどない。
基本、歩く僕の近くを浮遊して移動する。
浮遊する点は純粋に羨ましい。
「ほら、そっち行かない。迷子になるよ」
僕には霊感がない。むしろ零感だ。
しかし、彼女だけは視えるし声だって聞こえる。
世の中、不思議なことが起こるもんだね。
驚き。本当、びっくり。
「(やっぱ、触れない)」
恋人関係なのに。
キスやハグは勿論、手も繋げない。
そして、当たり前だけど彼女は歳をとらない。
それが一番、心を締め付ける。
首に腕を絡め、擦り寄ってくる愛おしい彼女。
でも、僕にはどうすることもできない。
もどかしさだけが積もっていく。
頭に手を乗せてもすり抜ける。通り抜ける。
撫でるフリが精一杯。
ま、それは彼女も一緒だけども。
僕を通過するから加減する。
毎回、仕草だけを繰り返す。
「A…」
彼女を抱きしめた。
加減しなければいけない半透明の彼女。
彼女を安心させようと抱きしめる。
２年前は普通に出来たこんな行為すら、今は障害でしかない。
神が居るなら問うてみたい。
彼女を僕の元へ送った理由を。
神が入るなら願いたい。
一度だけで良い。彼女を抱きしめたい。
今日も彼女は僕の隣で浮いている。
そして、今日も僕は彼女を成仏させられない。
＿＿今日も彼女は浮いている
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：秋花火 | 作成日時：2015年12月3日 20時
