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紡side
｢でも…ずるいよね。私は天くんが海外に行く時の空港で、こっそり天くんの荷物の中に想いを書いた手紙入れてたのに…相手には思いを告げさせないなんて。｣
本当…嫌になるなぁ……と言いながら、如月さんは右手で髪をくしゃっと撫でた。
｢……九条さんには、正体明かさないんですか…？｣
｢……バレるまでは黙っとくつもり。事が大きくならない限りは私は動かないつもりだよ｣
｢そう…ですか……｣
何だかモヤモヤしてしまう。
今すぐに九条さんに、如月さんはあなたの探している人ですよって教えてあげたい。
如月さんはもう何も心配しないで、九条さんに抱き着いてしまって良いんですよって言いたい。
でも私には…何も出来ない。
｢っ……｣
｢……。｣
悔しくて俯いていると私の頭に温かい感覚。
顔を上げると私に微笑みかけながら頭を撫でてくれている如月さんがいた。
｢つむちゃんはそんなに思い詰めなくていいんだよ。これは私が決めたこと。
こうしてたくさん考えてくれてるつむちゃんや、今でも私を探してくれてる天くんにとっては苦しいことかもしれないけど……
それでもこうするしかなかったんだよ。プロっていうのは、それくらい覚悟しなきゃやっていけない。
半端な気持ちは、ファンの人たちやスタッフのみんな。私の場合は梨月や直央、片嶋さんに迷惑だから。｣
って言っても私も人間だし、仕事では出さなくてもプライベートではダメかもしれないね。と言って悲しそうに笑う如月さん。
そんな如月さんを見て私は決めた。
｢私、絶対如月さんにもうそんな悲しい顔させません。絶対、幸せにしてみせます！｣
｢へ？｣
それに……
九条さんのあの寂しそうな顔。
プロ意識の塊みたいな九条さんでもあんな顔をする。
それくらい如月さんが大切なんだと思うから。
あの人にももうあんな顔をさせたくない。
｢如月さんは、また笑ってください。いつか、絶対にありのままの姿のまま素敵に笑える日が来ます！｣
｢…！………ふっ…ありがとな、つむちゃん。｣
悲しげではなく、綺麗に微笑んでくれた如月さん。
私はそれに笑顔で返した。
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作成日時：2018年11月10日 23時
