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あるとside
｢ん……お姉…ちゃん……？｣
｢っ…！！｣
腕に埋めていた顔を勢いよく上げAを見ると、虚ろな目で私を心配そうに見つめていた。
｢A…？目が…覚めたの……？｣
｢え…？寝てたの……？｣
｢あ…｣
『目が覚めたとしても、記憶を失っている可能性が高いです』
手術が終わった後に、医師がそう言っていたのを思い出す。
今のAには……記憶が無い。
｢ごめんって…謝ってたけど……お姉ちゃんは、何も悪くないでしょ…？｣
｢ううん…私が悪いの……ごめんね。A……痛い思いさせて……｣
｢…？……！何でこんなにボロボロなの…｣
混乱し始めたAをとりあえず落ち着かせて、弥生くんに連絡する。
するとすぐに、仕事が終わり次第行きますと返事が返ってきた。
｢……そんなことが…｣
何があったのか軽く説明すると、Aは難しい顔をして黙り込んでしまった。
看護師さんにも報告し、ご飯を出してもらった。
食欲がないから要らないの一点張りで、お姉ちゃんが食べなよ。と言われ、初めは断ったもののAが譲らなかったので、私がご飯をいただいた。
｢……俺。｣
｢…！A…？｣
｢…って言ってた気がする。自分のこと。違う？｣
｢…ううん。合ってるよ…｣
｢大事な人の…邪魔になりたくなくて……それで…何したんだっけ……｣
｢……。｣
いろんなところを見たりして視線を彷徨わせ、一生懸命思い出そうとするA。
するとしばらくしてAの動きが止まった。
｢ダメだ……思い、出せない……大好きな…人の事のはず…なのに……っ｣
とうとうAは思い出せないことに対して、ポロポロと泣き出してしまった。
私は頭を撫でながらA抱きしめる。
｢焦らなくていい……ゆっくり思い出せばいいんだよ…｣
｢うっ…うぅ……｣
天くんのことが思い出せないんだ。
Aにとってはすごく辛いことだろう。
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作成日時：2018年11月10日 23時
