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｢天くん！｣
その声にボクはばっと振り返った。
そこには瑠璃色の髪を高い位置で束ね、白いコートを羽織り、ピンクの長めのスカートに黒のレギンス、茶色のブーツを履いたAが立っていた。
変装のためか、メガネとマスクをつけている。
｢っ…！｣
彼女は嬉しそうにボクの方へ駆け寄って来た。
Aはボクのそばまで来ると、マスクを外した。
ボクは彼女の顔をまじまじと見つめる。
きょとんとした顔をした彼女は、子首を傾げる。
｢どうしたの？天くん｣
｢…あ……A…｣
｢？｣
"会いたい"
その願いがいとも簡単に叶ってしまったことに、驚きが隠せない。
それに……別に嫌われていなかったし、口を利いてくれないこともなかった。
逆に彼女から声を掛けてくれたし、駆け寄って来てくれた。
今、あんなに会いたかった人が目の前にいる。
しばらくAの顔を見つめることしか出来なかった。
すると少し頬を染めた彼女が口を開く。
｢あ…の……そんなに見られると恥ずかしいんだけど…今日の格好…変かな…？｣
彼女は恥ずかしそうに目を逸らすと、再びボクの方を上目遣いでちらっと見やる。
しばらく会っていなかったせいか、すべての仕草が愛しくてたまらない。
でもこの気持ちは、今、伝えることが出来ない。
今想いを告げたところで、これから先ボクが日本に帰ってくるまでの間、彼女を苦しめるだけだ。
｢ご、ごめん……急に…現れたから…｣
｢あ、ビックリさせちゃったかな。ごめんね？｣
でも、私が天くんを呼んだ声、よく聞こえたね。と笑いながら話すA。
そりゃ聞こえるに決まってる。
ちょうどAのことを考えていたこともあるが、好きな人の声を聞き逃すはずがない。
｢……Aの声、よく通るから聞こえた｣
｢へ？そーかなぁ｣
なんて思ってても、はぐらかすように別の言葉を使う。
言ってしまえば、想いを全部告げてしまいそうだから。
｢あ！｣
｢…？｣
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作成日時：2018年10月21日 23時
