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真っ暗な中。
複数の声が聞こえる。
｢っ…！ダメよ天！！｣
｢ダメだ…！行くな！！天！！｣
｢…行かないで！！天にぃ！！｣
｢待って！天にぃ行かないで！！天にぃ！！｣
これは……ボクが見捨てたも同然の家族の悲鳴。
｢大変だったね。もう少し早く声掛けてあげれば良かった……ごめんね。よく頑張ったね…｣
｢ううん。すっごく辛かったのによく一人で頑張ったね。気にしなくていいんだよ。また泣きたくなったら私のとこおいで？｣
これは……ボクが抱えてるものを一緒に背負おうとしてくれている大切な……ボクの大好きな人の声。
｢七瀬くん、ほんと可愛いね。これからもAと仲良くしてやって？｣
｢あ、七瀬くん！！またおいでよ！いつでもAの話してあげるよ〜！！｣
これは……キラキラした笑顔でいつも優しく迎え入れてくれるボクの大好きな人のお姉さんの声。
｢君が僕について来ると言うなら…このショークラブの借金を肩代わりして、君たち家族を助けてあげよう。もちろん、弟くんの治療費も出すよ｣
｢ふふ…いい子だ｣
これは……今ボクが尊敬している…でも、恨めしく思っている人の声。
｢これ以上俺の親友に手ェ出すならタダじゃ済まさねぇぞ…｣
｢いいっていいって！良かったな！ずっと心配してたもんな！｣
これは……ボクのことを親友だと言ってくれるただ一人の友達の声。
ボクはたくさんの人の声を聞いてきた。
ボクを求める声。
ボクを心配する声。
ボクを引き止める声。
ボクを慰めてくれる声。
ボクはそのすべてから耳を塞いできた。
この真っ暗な空間の中で、ボクはただ一人取り残されたような気分になる。
そして、また別の声が聞こえてくる。
『君は結局は家族を見捨てられるんだね』
違う…
『天くんがそんな無慈悲な人だと思わなかったよ…もう仲良くしたくない……』
お願い…離れていかないで……
『天にぃは俺たちを捨てたんだ』
見捨ててなんかない……
『七瀬くん…ごめんね？もうAと関わらないでもらえるかな…。Aのこと傷つけられそうで怖いの』
傷つけたりしないからそんな目で見ないで……
『七瀬…あんなに大切にしてた弟見捨てたのか？アイドルだかなんだか知らねぇけど何か失望したわ…。親友とか恥ずかしくなってきた』
睨まないで……ボクは見捨ててない……
お願い……ボクをひとりにしないで………
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作成日時：2018年10月21日 23時
