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｢ただいま｣
｢あ！天にぃおかえり！！｣
｢陸…ただいま｣
嬉しそうに玄関まで走ってきた陸。
そんな陸の頭を撫でて、リビングまで歩く。
｢ただいま母さ…｣
｢…！今こっちに来ちゃダメ…｣
｢あぁ…天くん。帰ってきたんだね｣
｢…九条…さん……｣
そこには何度追い返しても諦めずにボクを連れていこうとする男、九条さんがいた。
九条さんはゆっくりと立ち上がり、ボクのそばまでやってくる。
｢どうだい？一緒に来る気になったかい？｣
｢……ボクは行きません。陸を置いてなんて…｣
ボクのその言葉を遮るように九条さんが耳元で囁く。
｢弟くんを助けられなくていいのかな…？｣
｢っ…！｣
ばっと顔を上げ、九条さんを見る。
九条さんはボクの顔を見てふっと鼻で笑うと、ボクの肩に手を置いた。
｢弟くんは学校に行っていないよね？でも君は学校に行っている……この意味は分かるかい？｣
｢…？｣
九条さんの顔を見つめていると、怪しく笑ったあとゆっくりと口を開く。
｢君がいない間に弟くんやご両親に危害を加えることはできるってことだよ…？｣
｢っ……！！｣
｢君が僕について来ると言うなら…このショークラブの借金を肩代わりして、君たち家族を助けてあげよう。もちろん、弟くんの治療費も出すよ｣
いつの間にか陸は母さんと父さんのそばにいた。
3人が心配そうにこちらを見ている。
陸は今にも泣きそうな顔をしていた。
こっちが話している内容は、あの3人には聞こえていない。
前々から、お客さんを楽しませることについて九条さんから話は聞いていた。ここ最近の父さんと母さんが経営しているショークラブは、お客さんを楽しませることを忘れている。
そこはボクも納得がいっていた。
そして、ボクが九条さんについて行けば陸の治療費も出るし、借金も肩代わりしてもらえる。
そこまで考えて思考が止まる。
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作成日時：2018年10月21日 23時
