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それからしばらくAは学校を休み続けた。
周りのみんなから心配そうな声が聞こえる。
でも体調不良じゃないことを知っているボクは、頬杖をついて窓の外を眺めながら、今日も忙しそうに走り回っているAを思い浮かべて、他人事のように大変だなぁと考える。
そんなボクの元へ歩み寄ってくる足音がひとつ。
その足音はボクの横でピタッと止まる。
何かと思い顔をそちらに向けると、そこに立っていたのは卯ノ田。
「なぁ、七瀬。Aちゃんが何で休んでるのか知ってるか?」
「は?何でボクに聞くの。」
「その言い方は知らないんだな?Aちゃんは今遠いところに住んでる親戚の家にお通夜とお葬式に行ってるらしいんだ。だからしばらく学校に来れないって言ってたぜ。」
「はぁ…だから何?」
「何だよ。自分が知らなかったからって俺のこと睨むなよ」
まったく見当違いなことを言ってドヤ顔をしている卯ノ田に笑いをこらえつつ、ポーカーフェイスを決め込む。
そしていつの間にか七瀬と呼び捨てにされていることに少し苛立ちを覚える。
(今頃Aは、雑誌の撮影してるんじゃないかな…?今日は歌じゃなくてモデルの方の仕事のはず…)
「悪いね、生れつきこんな目つきなんだ。睨んでるつもりは無いよ」
「ふん…ま、睨まれても別に気にしないけどな。Aちゃんにろくに相手されないくせに、あんまり生意気な態度取らない方がいいんじゃないか?」
「何で?」
「Aちゃんと仲が良い俺から嫌われれば、Aちゃんと協力して、お前なんか簡単に潰せるってことだよ。」
「Aはそんなことしないよ」
「なっ…お前いつの間に呼び捨てに…」
「くだらないことでボクに絡まないでくれる?ボクはキミみたいな単細胞と喋る趣味ないから」
「お前…」
今にも掴みかかりそうな勢いでボクを睨んでいる卯ノ田。
周りの人達からは「また卯ノ田くんが七瀬くんに絡みにいってるよ…」とか「Aちゃんと七瀬くんが本当は仲良いの知らないのかな…」とか「卯ノ田くんも懲りないよね…。あれで如月さんと自分が一番仲良いって思ってるのかな…」なんていう声が聞こえてくる。
あまりに滑稽で思わず吹き出しそうになる。
「授業、始まるよ。座った方がいいんじゃない?」
「チッ…」
舌打ちをかますとそのまま席に戻っていった。
(ほんとに勘弁して欲しいな…。関わりたくないのに)
そんなことを思っていると、次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。
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作成日時:2018年10月21日 23時