105話 ページ9
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この世界に【オーバーブロット】が存在するように、元の世界にも【異能の暴走】というものがある。
異能者だからといって必ずなる訳では無い。
だが、異能特務課の記録によれば毎年不特定多数の異能者が引き起こしているものだ。
暴走を引き起こされると、異能力の威力がパワーアップしてしまう。
火を操るならば歩く火炎放射器となって街を業火で焼き潰し、氷を操るならば某雪の女王の如く氷で出来た巨大建造物を作り出したり、何処も彼処も凍てつかせてしまう。
例え本人が望んでいなくとも、暴走なのだからコントロールや制御は出来ない。
そうしてその様な事件を起こしてしまい、その都度異能特務課が出動する羽目になって頭を悩ませているのだそう。
数年前、露西亜国内のとある街中を歩く人々の携帯やパソコンが突如として全く使い物にならなくなったのだ。
バグったり、原因不明のウイルスを送られたり。それは3日間も続いた。勿論異能特務課は動いたが、手がかりは掴めないまま収束してしまった。
それもそうだろう。その異能者は表沙汰になっていない上に自室にて寝込んでいたのから。
とある屋敷の地下室の一室、天蓋付きのベットで横たわる少女は熱に喘いでいた。
その傍に少女の兄は彼女を心配そうに看病をしている。
「…熱は……昨夜より2.6℃も上がっていますね」
妹は1度医学を心得える知り合いに見てもらったが、結果は何も分からずじまいだった。
「…主様、夕食の支度が出来ました」
熱心な看病を続ける兄に侍従長が声を掛けた。
侍従長も妹を心配している一人だ。無機質なその目には兄を写しているものの、同時に危惧の色が滲んでいた。
「……いえ、ぼくはもう少し様子を見てから食べに行きます」
「承知致しました」
侍従長は丁寧に腰を折り、「失礼しました」と言って部屋から退出した。
妹が熱に倒れてから一日が経過していた。妹のAは目を覚まさず、彼女の身体は原因不明の発熱に蝕まれていた。
顔は赤く、頬も手も低体温である彼女には信じられないほどに熱い。
「A………。」
兄のフョードルは自分の無力さを呪った。
出来ることならば自分がその苦しみを肩代わりしてやりたい。けれども彼女の熱が収まる気配は無い。
外が電子類の異変に騒いでいるなんて、フョードルは知る由もなかったのだ。
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瑞稀 - 好きとしか言いようがないっすわ…監督生の言ってることに共感しか湧かないのは何なんすかね…神作ktkr(ありがとうございます) (7月21日 4時) (レス) @page38 id: 0ecff74da0 (このIDを非表示/違反報告)
yuuna(プロフ) - 双子の愛が素晴らしいなと思いました!双子と呪術廻戦のクロスオーバーが見たいです! (2021年3月27日 0時) (レス) id: a73b6209c2 (このIDを非表示/違反報告)
煨(ウズミビ)(プロフ) - → 私自身が片割れになった様な気持ちで読んでいたので余計…笑 何度でも云えますが、本当に素晴らしい作品でした。有難う御座います。 (2021年2月9日 1時) (レス) id: eaf0a1c543 (このIDを非表示/違反報告)
煨(ウズミビ)(プロフ) - 初めまして、つい先程一気読みさせて貰いました。私はtwstは余り詳しく無いのですが、読んでいて迚も楽しかったです。フェーヂャと片割れに関する監督生さんの語り等……所々笑いながら読めて面白かったです。又、自分が二次創作の中の伽羅と云うのが不思議な感覚でした (2021年2月9日 1時) (レス) id: eaf0a1c543 (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - ミ゜ッ(死亡) (2021年1月11日 20時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あ〜ちゃん x他1人 | 作成日時:2020年7月24日 0時