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砂色のコートを揺らした男…太宰くんに片腕を捕まれ、異能が不発動になったフェーヂャは彼を睨み付けた。
「………何故貴方が此処に居るんです?」
「そりゃあ魔人も釈放されたんだからさ。私も釈放されなきゃ可笑しくないかい?」
「そんなことは聞いていません。何故貴方がこの世界に居るんですか」
フェーヂャの問いは真っ当だった。
この世界へ通れる道は私たちの屋敷の洗面所の鏡のみ。
けれど真逆彼が屋敷へズカズカと入ってくるとは思えない。入って直ぐに優秀な侍従長に確保されるだろう。
研いだばかりのナイフの刃の如く鋭い視線を突き刺すフェーヂャに、太宰くんは軽快に笑って見せた。
「簡単だよ。君が殺したと思い込んでる異能者に送って貰ったからさ」
「………何ですって?」
その事ばかりには私もフェーヂャと同意見だ。
「君のことだ。彼を始末するのは容易く想像出来たよ。始末されると分かっている人間を私たち探偵社は野放しにはしないさ」
「可笑しいですね。確かにぼくはあの男に触れた筈なのですが…」
「私の部下には優秀な子が居てね。雪を降らせて空間内をスクリーンに変えるって云う異能者の子なのだけど」
どうやらフェーヂャは心当たりがあったようで、鼻で笑った後に「道理で変な天気だと思いましたよ」と吐き捨てた。
「あの。仮にフェーヂャが始末した男が幻だとすると、実際に献花があったり民間人に知れ渡っていたのは何故ですか?」
単純に疑問を太宰くんに聞く。
地面の乾いた血の跡だって、あの主婦の会話だって覚えている。
「あー。本物の異能絡みの事件が数日後にそこで起きたんだよ。本当は乱歩さんが解決させたんだけどね、一定期間の間、世間には嘘の情報を流すように知り合いの刑事さんに頼み込んだんだ」
彼は「全身の血を別の場所へ移す異能者何て初めて見たよ」と笑い飛ばしている。
ならば異能者の男は生きているのか。
そう思うと安心した。私の所為で罪のない命が奪われたと思うと、永遠に悪夢を見そうだった。
「箕浦さん、私だけじゃ動かなかったけど乱歩さんに頼まれたら矢張り弱かったなぁ」
「…となると太宰くんには私がこの世界に帰って来て、この様な展開になる事も予測済みでしたか」
「うん、まぁね。お姫様の危機には騎士が現れるものだろう?」
「一体誰が騎士かは聞きませんが、感謝はしておきます」
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瑞稀 - 好きとしか言いようがないっすわ…監督生の言ってることに共感しか湧かないのは何なんすかね…神作ktkr(ありがとうございます) (7月21日 4時) (レス) @page38 id: 0ecff74da0 (このIDを非表示/違反報告)
yuuna(プロフ) - 双子の愛が素晴らしいなと思いました!双子と呪術廻戦のクロスオーバーが見たいです! (2021年3月27日 0時) (レス) id: a73b6209c2 (このIDを非表示/違反報告)
煨(ウズミビ)(プロフ) - → 私自身が片割れになった様な気持ちで読んでいたので余計…笑 何度でも云えますが、本当に素晴らしい作品でした。有難う御座います。 (2021年2月9日 1時) (レス) id: eaf0a1c543 (このIDを非表示/違反報告)
煨(ウズミビ)(プロフ) - 初めまして、つい先程一気読みさせて貰いました。私はtwstは余り詳しく無いのですが、読んでいて迚も楽しかったです。フェーヂャと片割れに関する監督生さんの語り等……所々笑いながら読めて面白かったです。又、自分が二次創作の中の伽羅と云うのが不思議な感覚でした (2021年2月9日 1時) (レス) id: eaf0a1c543 (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - ミ゜ッ(死亡) (2021年1月11日 20時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あ〜ちゃん x他1人 | 作成日時:2020年7月24日 0時