19話 ページ26
待ち合わせについたのは約束の時間の30分後だった
目の前には眉間に深い皺を寄せた越前リョーマ
いつもの青学ジャージではなく、普通のジャージにテニスバックを持っている彼は周りの女性を釘付けにしていた
ジャージなのに格好いいとは何事だ
私も今日は動きやすい方が良いと思い、サーパン、Tシャツ、パーカーといったラフさ重視にしてしまった
周りのお洒落な女性が私を見る視線と、越前からの視線のWパンチはツライ・・・・
目を合わせずらいが、今回は完全に私が悪いので必死に頭を下げた
『越前、ごめんなさい!!』
「遅刻の理由は?」
『寝坊です!!』
「・・・はぁ、ならいいけど」
『え?』
「何かあったかと思った」
『心配してくれてたの?』
「さぁね、あと名前」
淡白な話し方だったが、なんだかんだ優しい越前のことだ
きっと心配させてしまったに違いない
越前と呼んだからか、更に彼の眉間の皺が深くなったため再び頭を下げて謝った
『本当にごめんなさい、リョーマ』
「ポンタ1週間ね、A」
『なっ!?・・・分かった』
「じゃあ行くよ」
少ないお小遣いが全てポンタに消えてしまうことになり、軽く絶望しつつも自業自得なため素直に彼の要求を呑んだ
私の返事に満足したのか彼の機嫌は多少直ったようで、目的地へ出発した
たどり着いたのは貫禄のある和風の建物だった
『・・・ここ?』
「そう。入るよ」
リョーマは慣れているのか、ためらいなく入って行った
そこには辰五郎というおじいさんが私の顔を見ると少し驚いたような顔をしたが出迎えてくれた
「お前が女を連れてくるとはな」
「別に」
「数年前に一人連れて来た以来か、確かスミレちゃんとこの・・・」
「それより早くラケット見てくんない?ほら、A」
『あ、このラケットのガットの張替お願いします』
女の子連れてきたことあったんだ・・・
そう思った瞬間、胸が少しチクっとしたような気がした
ラケットを受け取った辰五郎さんは、私のラケットを見ると一瞬顔を歪めた
「こりゃあ、暫く使ってなかっただろ?」
『っ!?・・・少しテニスから離れていたので』
「そうか。なら、腕に感触が伝わりやすいようにしとく」
『ありがとうございます』
「暫くかかるんだろ?どっかで時間つぶしとく」
『あ、リョーマ!よろしくお願いします』
もう一度頭を下げてお願いしてから、辰五郎さんの返事を聞かないまま出て行ってしまったリョーマの後を慌てて追いかけた
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作者名:アキラ | 作成日時:2018年9月1日 21時