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side涼太
彩はああ言えばしばらくこちらに来ないだろう。
彩にはあまり聞かせたい話ではないし。
彩もそれを読むだろうから、きっと今頃難しい顔をしながら俺への飲み物を作ってることだろう。
そう思うと、彩が愛しく思えて、ふっと笑ってしまう。
「ねえ、館さん……。ふっかなにあったの?」
見かけによらず、可愛らしくどこか幼い照が眉を下げて俺に尋ねる。
「あー…。今日女に呼び出されてたろ?あれ、昔の女らしい。彼女っていうか…まあ、そういう関係のね。」
俺の言葉に眉間を寄せる照。
阿部は、やっぱりね、と言わんばかりの表情で、ふっかの頭を軽くごつく。
佐久間はそんな阿部を慌ててとめてる。
話を聞けば親父さんは商店街の飲み会に出てるので家にはいないとのことで、ふっかを叱りつける人はいないだろう。
「…だからそういうのやめろって言ったのに…。」
そう呟く照。
そんな照を彩に見せたくなかった。
照の考えは間違ってるわけじゃないし、真っ当だと思うけど、真っ当な恋愛をしてるやつの方が少ないと思う。
彩は気づいてないと思ってるだろうけど、
俺とふっかと阿部は気づいてる。
彩は照のことが好きだって。
そして、俺とふっかはもうひとつ知っている。
彩と翔太の関係を。
「照、今のふっかはそこを抜けようとしてるんだよ。本当に好きな人が出来たから。」
俺の言葉に目を見開く照。
「えっ……誰?」
「それは言えない。ふっかのことだから。」
俺の言葉に悲しそうな目をする。
「それは僕も照もふっか本人から聞いた方がいいことだよ。僕たちにもきっといつか話してくれるから。」
阿部はそんなふうに言うけど、きっと、もう分かってるんだ。
そんな阿部の言葉にそうだよな。って呟けば、少し優しく笑う照。
そんな話をしている俺たちに、なにか勘づいたのか佐久間はニコッと笑って、
「しかし彩遅いな!彩のこと呼んでくるでやんす〜!」
と明るく言ってバックヤードへ消えていった。
「ねえ、館さん。」
「なに?」
呼ばれた方に振り向けば阿部がにっこりと笑って、
「今度二人でゆっくり話してね?」
その言葉に、
人は見かけによらないな、と、
生きてきて何回も思ってたことを改めて思う。
こいつはクセモノだ。
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作者名:SNOWSNOW | 作成日時:2019年9月12日 0時