好き、嫌い、好き (ページ34)

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AM11:00

私は指定されたホテルのロビーで
1人待っていた。

｢彩、悪い。待たせたな。｣
『ううん、私も今来たところだから。』

そこに現れたのは
優しい私の義理の父親と義理の母親。

｢郁人もそろそろ来るって言ってたから、とりあえず先に向かおうか。｣
｢彩ちゃんそのワンピース似合うわね。｣
『ふふ、お義母さんの見立てだからね。』

3人で話しながら個室のあるレストランへ。

普段絶対着ないだろう
ブランドのワンピースに
ふんわりお団子を作った私のスタイル
きっと知り合いが見たら
ビックリされちゃうんだろうな。

｢ご飯はちゃんと食べてる？｣
『うん、お義母さんのおかげで料理も上達してるよ。』
｢そうか、深澤の店はどうだ？｣
『マスターも、息子の辰哉くんも優しいし、お仕事もすごく楽しいよ。お義父さんのおかげだね。』
｢どうしてもバイトするって聞かないワガママ娘のためだからね。｣

そう言って豪快に笑うお義父さん。

私を一人ぼっちにさせないために
一緒にいてくれた河合家の人達。
ほんとに優しくしてくれた。

でも、やっぱり遠慮しちゃうところが
あるから、中学3年の時
私は二人の息子の郁人くんに
相談した。

『高校入ったら一人暮らししたい。』
｢彩、危ないよ。｣
『分かってるけど…｡でもこのままだと……。』
｢……親父たちの説得はしてみるけど、条件がある。聞ける？｣
『なに…？』
｢俺が所有するアパートに住むこと。週に一回は必ず家族で集まること。できる？｣
『……できる！』

そこから何ヶ月もかけて
お義父さんたちも理解してくれて
今の形の家族になった。

大学生になってからは
月に一回に変わったけど、
遠慮しなくていいから、
こうやって会えると色んな話が
楽しくできるようになった。

学費も払ってもらってるのに
家賃は家族サービスでかなり
安くしてもらってる。

だからせめて生活費は
自分で稼がなきゃとバイトを
ガンガン入れる私。

それもいい顔されなくて、
お義父さんの昔からの知り合いの
深澤家のカフェを紹介された。

おかげで毎日楽しいから
ほんとに感謝してる。
もっと働きたいけど
今は甘えられるとこは甘えろって
郁人くんに怒られたから
そこそこにしてるつもり。
まだ働きすぎって怒られるけど。

｢ごめん、遅くなった。｣

細身のスーツ姿で現れた
かっこいい私のお兄ちゃん。

『郁人くん久しぶりだね。』
｢おう。今日も可愛いね。｣

そう言って頭を撫でる郁人くんは
やっぱりかっこいい。