好き、嫌い、好き (ページ12)

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阿部くんに言われたとおり、涼太に送って貰うことになった。

｢いつもこの時間だよね？帰り怖くないの？｣
『いや、そんなに離れてないから…。割と慣れたよ。それに途中までさっくんと一緒だったり、ふっかの買い出しのついでに送られたりしてたから。』
｢阿部は送らないんだ。｣
『んー……。多分私が阿部くんのこと苦手だって知ってるんだと思う。』
｢…ははっ、確かに彩は阿部のことは苦手かもね。｣

面白そうに笑うけど、私としては死活問題。

そんな人間と円滑に仕事できるのか。

『嫌いとかじゃなくて…何考えてるか分からなくて怖いっていうか…。』
｢あいつは頭いいから、俺らとは別次元でしょ。俺もたまに怖いなって思うし。｣

涼太が人に対してそんなこと言うのは珍しい。

｢ただ勉強できるだけじゃなくて、人間としても頭がいい人間って、やっぱ怖いよ。感情的にならないってことだからね。｣

そうか…確かにあんまり感情的になるとこ見たことない。
いつもニコニコしてる。
そしてニコニコしたまま爆弾放り投げてくるとんでもない男だ←

｢まあ今まで通り近づきすぎないようにしたらいいよ。｣
『うーん、そうする…。』
｢怖いもんには近づかないで、いつもの彩でいてくれたらお兄さんは嬉しいです。｣
『ねえ、私たち同い年じゃないですか？』
｢感覚的に、彩のお兄さんだもん。仕方ない。｣

その言葉にむぅと口を尖らせてしまうと、頭をポンポンとされる。

｢彩のことはちゃんとお兄ちゃんが守るから。大丈夫。｣

不覚にもドキッとしてしまったけど、涼太の眼差しはいつもと同じで優しい。

アパートの前に着くと、

｢ちゃんと鍵閉めて寝るんだよ。｣

なんて優しく言って、帰っていく涼太。

歩いてきた道を戻る後ろ姿は、
いつもと同じで凛々しくて。

涼太の彼女になれる人は幸せだろうな。

自分がそうなりたい、と思わないのは
やっぱり恋人になりたいのは1人だから。

さっきの照くんの言葉を思い出し、
我慢してた涙が溢れた。

自分を汚れてるとは思わないけど、
彼からは汚れて見える自分。

もう、諦めたい。
もう、消えたい。

そんな考えに占められていく私に

｢お前なにやってんの。｣

いつもの声がした。

『翔太…なんで……。』
｢…話聞いてやるから、部屋行くぞ。｣

こういう時に助けてくれる翔太に、
結局私はまた甘えてしまう。

やっぱり私は汚れてるのかもしれない。

ごめんね、翔太。