一瞬の夢をあなたと。 (ページ4)

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マニュアル通りに堕ちるページ4

【下着いたよ。待ってるね】

彼からのメッセージに
私は靴を履いて玄関で改めて

『今までお世話になりました。』

この部屋にお礼を言う。

ドアを開けて、下を見ると
大きい黒い車が止まっていた。

この家にはそぐわない、なんか高そうな車だな。

キャリーバッグを持って下に降りようとすると
その車から岩本さんが降りてきた。

黄｢危ないから。そこで待って。｣

そう声をかけられて、大人しく止まる。

彼は小走りでボロいアパートの
ボロい階段を軽快に上がってきた。

黄｢荷物これだけ？｣

『はい、元々荷物少ないんで。』

黄｢それならOK。行こうか。｣

私の背中を軽くポンと叩いて
キャリーバッグを持ち上げて
階段を下りていく。

『ごめんなさい、重いのに。』

黄｢いや、俺には軽いくらいだよ。｣

ははって笑って答えてくれる彼に胸が痛む。
かっこいいなあ、本当に。

キャリーバッグを後部座席にしまって
助手席を開けて誘導してくれる。

レディーファーストが出来すぎて
感心してしまうよ、岩本さん。

黄｢よし、じゃあ出発します。｣

『お願いします。』

私がペコッと頭を下げると軽く頭を撫でられて

黄｢そんな気にしなくていいから。｣

優しく笑って彼は改めてハンドルを握った。

どこへ向かうのかはイマイチ分からない。
が、そんなのはどうでもいい。

運転をする岩本さん
ものすごくかっこいい。

よく言うよね、運転する男の人は
かっこいいってさ。

自分がこんなマニュアル通りな女とは
思わなかったよ。

車を走らせて10分ほど
彼はひとつのマンションの駐車場に
車を停めた。

黄｢はい、着いたよ。｣

駐車場は地下だけど、、
入る前に見た外観は明らかに
高級です！！って言ってるようだった。

有難いけど、申し訳なさが今更
湧いてきてしまった。

『あの、岩本さん、ほんとすみません。』

黄｢…ありがとうの方がいいなあ。｣

『…ありがとう、ございます。』

黄｢どういたしまして。ほら、行くよ。｣

またキャリーバックを持ってくれた彼の後ろを
ついて行く。

エレベーターに乗り込むと彼が押したのは
最上階だった。

…お金持ち、なのか？

慈善事業みたいな気持ちで声をかけてくれたのかな。

どんな気持ちなのかは今は分からないけど、
この状況なのだから甘えさせてもらうしかない。

なるはやで次の家を探そう。

心の中で誓い、彼の家にお邪魔した。

『お邪魔します。』

黄｢これからは、ただいま、だよ。｣