一瞬の夢をあなたと。 (ページ17)

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バイト先にてページ17

？｢A、今日は自転車なん？｣

私が自転車を停めてる時に声をかけてきた人。

同じバイト先に務めてる人で、私の元彼。

『うん、人に借りたんだ。康ちゃんこそ珍しいね、歩きなんて。』

橙｢兄ちゃんが車持っててもーてん。まぁ共同やから文句言えへんけどな。｣

向井康二くんは、カメラマンの卵として
仕事をしながら、足りない分はここでバイト。

付き合ってたのは、ほんの数ヶ月だったんだけど
私としては素敵な時間だったから感謝してる。

別れた理由は、まぁ、
康ちゃんモテるからね…

女の子にいつも追われてて
見てて苦しくなって自分がギブアップした。

私の事、とても大事にしてくれてるの
わかってたんだけど、見てるだけでいいなんて
言えなくなってしまったんだ。

自分がこんなにヤキモチ妬きなんて
思ってなかったんだけどね。

橙｢うし、今日も頑張るか！｣

『うん！頑張ろー！』

今でも康ちゃんは好きだけど
今はもうバイト先の人として好きなんだ。

未練なんて無くなっちゃった。

それくらい、色んな人に愛されてる人だもん。
それに今の私は…岩本さんで心がいっぱい。

いつもは私はキッチンなんだけど
珍しく人が足りなくて。

私もフロアに出ることになった。

康ちゃんもフロアの人だから
役割分担しながら接客していく。

数時間たった時、康ちゃんから
大きい声が上がった。

橙｢ふっかさんとだてやん！お久しぶりやね！｣

その方へ振り向くと、
岩本さんの家で会った
深澤さんと宮舘さんだ。

2人も私を見てびっくりしてる。

そんなお互いの顔を見て
康ちゃんが2人に

橙｢ふふ、Aかわいいやろ？1年前からここに働いてるんよ。普段はキッチンやから2人は見た事ないやろうけど。｣

康ちゃん…可愛いって言うのは貴方くらいなのよ…

2人があまりにもこちらを凝視してくるから
どうしていいやら…。

でも無視するのは違うし、ぺこりと
頭を下げた。

『向井くん、私あちらのお客様の方へ行くね。』

接客中はこれが基本。
あだ名で呼ぶなんてよくない。

橙｢おん！よろしく頼むな！A！｣

康ちゃんはこれが普通だから許される、うん。

深澤さんと宮舘さんの視線が刺さる。

私何かしましたかね…？

でも今はお仕事しないと、ね。

この視線の意味に気づくのはもっと後の話。