一瞬の夢をあなたと。 (ページ2)

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優しさに抱きしめられたページ2

―――俺の家においで。

そういった彼は、連絡先を教えてくれて
私のアパートまで本当に送ってくれた。

連絡先に書かれてる名前を見て、

『いわもと、てる？』

黄｢その字で、ひかる、って読むの。｣

『…綺麗な名前ですね。』

黄｢はは、まじ？ありがとね。｣

初めて言われたわ。って、
あのくしゃくしゃな笑顔をしてくれた。

黄｢えっと、Aちゃん。うちはいつでも大丈夫だから、引越し決まったらとりあえず連絡しといで。家具はうちにあるから、できたら自分で処分してね。｣

『何から何まで…すみません。次の家決まるまで、お世話になります。』

黄｢いやいや、俺が勝手にお節介しただけだから。ちゃんとした家見つけて欲しいし、慌てなくていいからね。｣

『…ありがとうございます。』

初めて上京してよかった、って
思えたんだ。

彼に出会えた、たったそれだけで。

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次の日から荷物をまとめるようにした。
と、言っても家具もいらないと言われたら
そんなに荷物もない。

上京する時に持ってきたキャリーバッグに
簡単に纏まってしまう。

…あとは出るだけか。

独り言を呟けば、
LINEの通知音が響く。

【迎えに行くから、出る日が決まったら連絡しといで。】

岩本さんからのメッセージに
1人でドキドキした。

『あんなかっこいい人と一緒に生活、か。』

邪魔しないようにしないと。
ん？ていうか彼女とか居ないのか？
居たら早速邪魔してない？

私を家にどうぞと言うんだから
同棲はしてない、と思う。

勝手に一目惚れしといて
勝手に色々想像して
勝手に傷つく自分がなんだか笑える。

【至れり尽くせりすみません。荷物は少ないので、明日以降、岩本さんの都合のいい日で問題ありません。】

そう文字を打って、お気に入りのスタンプを
ポチッと貼り付けた。

直ぐに既読がついて、

【じゃあ明日の夜迎えに行く。】

そして私と同じスタンプが送られてきた。

｢ふふ、岩本さん、こんなかわいいスタンプ使うんだね。｣

大きくて厳つく見られそうな見た目からは
想像もつかないそのスタンプに思わず笑ってしまう。

…はやく、明日にならないかな。

そのスタンプを指でなぞれば
なんだかドキドキが止まらない。

明日からの生活を心待ちにする私に
1人で苦笑いをこぼす。

このアパート最後の日、
私は岩本さんのトーク画面を
見つめながらゆっくり目を閉じた。

攻撃的な光のはずのそれは
とても暖かくて、優しかった。