二十七話 一方、俺と千鶴は… ページ28
一方、その頃──…
千鶴の部屋では、今にも泣きそうな彼女と
それをなだめるAがいた。
千鶴「私は新選組の方々を
誤解していたと思いました…。
本当は温かくて優しい人かもしれない……
けど、彼らと私達には壁があります」
A「……」
千鶴「私は、それに踏み込んでは
いけないのでしょうか…?」
すがるようにAの袖を握りしめると、
彼女は困ったように
眉を下げてその頭を撫でた。
A「千鶴の言うことは正しいよ。
だけど……人にはそれぞれ守るものがある。
彼らは新選組を守りたいし、
同時にそのことで俺らを殺したくないんだ。
あいつらは……確かに優しいよ」
下方を見つめて少し寂しげに笑った。
これが自分達と彼らとの距離だ、
…──と言うように。
千鶴「Aさん…」
A「それに、俺にも絶対に
守らなくてはならないものがある。
だから…きみには踏み込んでほしくない」
千鶴「……Aさんの
守りたいものってなんですか?」
Aの瞳があまりにも真剣で、
その勇ましさに引き込まれるように
気付けば千鶴はそう尋ねていた。
A「……以前は両手に
抱えきれないほどたくさんあったけど、
今はとりあえず一つあるかな」
一族が滅びるまでは──…
家族や親戚をはじめとした集落全ての人と
たまに会えた同じ鬼…京の千姫、東の千鶴と薫。
風間家で過ごしていた時は、
千景や自分の周りにいた全ての人々──…
時が移り変わるにつれて、
守りたいものが変わっていった。
そして今──…
すべてを手放した彼女に
一つだけ守りたいものが残っていた──…
千鶴「はい…!」
重々しい雰囲気をくみ取って
千鶴も心してそれを聞こうと意気込んだ。
A「…───千鶴だよ」
千鶴「え…っ?」
頬を赤く染めあげた千鶴を知ってか知らずか、
Aは今日一番の優しい微笑で
彼女の手に自分の手を添えて包み込んだ。
自分の守りたいものは今、
この手の中にあると言うように。
A「歳はそう変わらないが、
本当の妹のように思っているよ。
これからも辛く…不安に思うことがあれば
遠慮せずに俺を頼ってほしい…」
千鶴「(そ、そういう意味ですか…)
ありがとうございます……っ」
その言葉を心強く感じながらも
どこか切なくて小さく落ち込んだ。
**********
続く
ラッキー人物
藤堂平助 祭りに行ったら、手をつないで一緒に楽しんじゃお☆
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亜紀野ユキ(プロフ) - 彩豊さん» ありがとうございます(*´ー`*) (2022年10月26日 14時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
彩豊(プロフ) - こんにちは!凄くおもしろかったです!これからどんな展開になるか気になります_:(´ཀ`」 ∠):更新頑張ってください!応援してます☆彡 (2022年10月21日 19時) (レス) @page50 id: 72022c3b56 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綵河さん» 薫くん良いですよね~♪僕も薫くんの生意気そうで寂しがり屋なところが愛らしいと思っています!!!!この小説でも早く登場させたいと思ってます!!!!!! (2016年8月10日 16時) (レス) id: f4bec4ec63 (このIDを非表示/違反報告)
綵河 - もっとたくさん薄桜鬼シリーズを書いてくれると読む気がわいてきます!ちなみに私は【南雲薫】の占いツクールを書いてくれると嬉しいです♪♪ (2014年3月31日 9時) (レス) id: 6ae65de84b (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 玲名さん» お世辞でも嬉しいです!!僕はとにかく小説を書くとき、いつも読者様たちの立場になったつもりで「どう書けば伝わるか」を考えながら書いています♪とはいっても、僕より素晴らしい作者様たちはたくさんいますが… (2013年12月16日 21時) (レス) id: 806d6ba1fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2013年2月3日 22時