二十三話 突然の嫌な報せは… ページ24
左之助「なんか言ったか?」
──づいっ
A「っ!!?」
左之助が心配そうに顔を覗き込んで
視線がかち合うと
やっと彼女は正気を取り戻した。
そして、バシッと慌てて彼の手を払って
平静を装うように咳払いする。
A「ゴホンっ!ま、まあ……
千鶴は笑顔が一番可愛いからなっ!」
そう言って、湯呑みを持ち
まだ冷めぬ茶を一気にズズーっと流し込む。
内心「熱っ!」と思ったが、
動揺を周りに気付かれないように
無心でのどに通し続ける。
千鶴「!!なっ…Aさん!?」
A「千鶴が可愛いのは事実だろ?」
千鶴「そんなことないです…っ」
いつも通りに千鶴を愛でると
Aはやっと気持ちが落ち着いた。
そして──…
ふと先程の左之助の手の温もりを思い返し
なんとなく自分の頭に手をやる。
A (……土方副長に対しても感じたが、
俺は少し…新選組の連中を
悪しき方へ誤解していたのかもしれんな…)
そこへ、突然──…
井上「ちょっと良いかい?みんな…」
スーッと遠慮がちに障子が開かれ、
広間にいる全ての者の視線を集めた。
彼の声色は重々しく、自然と彼女らを含めた
その場に居る者の様子が
和やかから神妙な面持ちへと移り変わる。
井上「大阪にいる土方さんから
報せが届いたんだが…
山南さんが隊務中に重傷を負ったらしい」
その言葉に一同は息をのんだ。
そこまで山南と面識のなかったAも
この事態には戸惑いを隠せなかった。
新八「それで山南さんは?」
井上「相当の深手だと文(ふみ)に書いてある…。
傷は左腕とのことだ…剣を握ることは難しいが
命に別状はないらしい」
千鶴「よかったぁ…」
平助「よくねえよ!」
井上の言葉を受けて安堵する千鶴に
平助がとっさに声をあげる。
一「刀は片腕で容易に扱えるものではない。
最悪、山南さんは二度と真剣を振るえない」
千鶴「え……」
平助の言葉を補う一の説明を聞き、
ようやく事の重大さに気付かされた。
千鶴と彼らとでは環境が違うので無理もない。
A「だが、命があるだけましだと俺は思う」
その失言を庇うようにとっさに言う。
しかし、その後に続くであろう
“武士としての彼は死んでしまうの
かもしれないが…”とまでは言えなかった。
彼らの内にうずまく不安を
わざわざ明瞭にしたくはなかったゆえに。
井上は近藤と話があるとのことで
そのまま広間を後にした。
**********
続く
ラッキー人物
藤堂平助 祭りに行ったら、手をつないで一緒に楽しんじゃお☆
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亜紀野ユキ(プロフ) - 彩豊さん» ありがとうございます(*´ー`*) (2022年10月26日 14時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
彩豊(プロフ) - こんにちは!凄くおもしろかったです!これからどんな展開になるか気になります_:(´ཀ`」 ∠):更新頑張ってください!応援してます☆彡 (2022年10月21日 19時) (レス) @page50 id: 72022c3b56 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綵河さん» 薫くん良いですよね~♪僕も薫くんの生意気そうで寂しがり屋なところが愛らしいと思っています!!!!この小説でも早く登場させたいと思ってます!!!!!! (2016年8月10日 16時) (レス) id: f4bec4ec63 (このIDを非表示/違反報告)
綵河 - もっとたくさん薄桜鬼シリーズを書いてくれると読む気がわいてきます!ちなみに私は【南雲薫】の占いツクールを書いてくれると嬉しいです♪♪ (2014年3月31日 9時) (レス) id: 6ae65de84b (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 玲名さん» お世辞でも嬉しいです!!僕はとにかく小説を書くとき、いつも読者様たちの立場になったつもりで「どう書けば伝わるか」を考えながら書いています♪とはいっても、僕より素晴らしい作者様たちはたくさんいますが… (2013年12月16日 21時) (レス) id: 806d6ba1fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2013年2月3日 22時