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八話 脱出を企てるも… ページ9

夕陽が差して
赤く染まる部屋の中──…


千鶴「このまま待ってたら
 きっと殺されてしまいます…」


千鶴は拘束が解かれた手を
膝の上で拳にして、ぐっと握りしめた。

千鶴の小太刀やAの刀が
彼らに奪われている以上、
まともな抵抗の手段はないだろう。


A「確かに……奴らは俺達よりも
 新選組の都合を優先するに決まっている。
 …────二人で逃げよう…!」


千鶴「は、はい!」


何よりも心強く感じる
差し出されたその手を強く握りしめた。


──スッ


Aが静かに障子襖を開けると、
運が良いことに部屋の周りには誰もいない。


A「よし…見張りはいないようだな
 ………うわあっ!!」


千鶴「わっ!!?」


先導して一気に廊下を駆け抜けようとしたが
突然、身体が宙に浮いてAは
千鶴とともに情けない悲鳴をあげた。


土方「この馬鹿ども。
 逃げられるとでも思っていたのか?」


後ろからやってきた土方に
悪さをした猫のように首根っこを掴まれ
二人して持ち上げられたのだ。


千鶴「放してください!」


土方「逃げれば斬る…
 昨夜、俺は確かにそう言ったはずだ」


A「逃げなくても
 どうせ口封じのために殺すのだろ!?」


千鶴「私…死ぬわけにはいかないんです!
 私にはまだ…
 やらなきゃならないことが……え?」


必死に土方の手から逃れようともがくが、
急に地面に足がついて言葉が止む。

土方自らが彼女らを放したのだ。


土方「……命を懸ける程の理由があるなら
 洗いざらい話してみろ」


曇りのない目を向けてそう言ったので
千鶴は圧倒されて無言で頷いた。

そんな彼に感心してAが口を開く。


A「お前…根は良い奴なのだな。
 俺は少しお前らを誤解していたようだ…」


少しだけ口角を上げて目尻を下げた。

新選組の人間に対しては
これがAの最初に見せた笑みだろう。


土方「(こいつ……笑うと女みたいだな)
 俺はただ…俺の筋を通しただけだ」


その表情に土方は僅かに肩を跳ねさせて
ふいっとAから顔を背けた。

直視するのに堪えかねて。



**********


続く

九話 もう一度大広間で…→←七話 俺らの命は天秤に…


ラッキー人物

藤堂平助 祭りに行ったら、手をつないで一緒に楽しんじゃお☆


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亜紀野ユキ(プロフ) - 彩豊さん» ありがとうございます(*´ー`*) (2022年10月26日 14時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
彩豊(プロフ) - こんにちは!凄くおもしろかったです!これからどんな展開になるか気になります_:(´ཀ`」 ∠):更新頑張ってください!応援してます☆彡 (2022年10月21日 19時) (レス) @page50 id: 72022c3b56 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綵河さん» 薫くん良いですよね~♪僕も薫くんの生意気そうで寂しがり屋なところが愛らしいと思っています!!!!この小説でも早く登場させたいと思ってます!!!!!! (2016年8月10日 16時) (レス) id: f4bec4ec63 (このIDを非表示/違反報告)
綵河 - もっとたくさん薄桜鬼シリーズを書いてくれると読む気がわいてきます!ちなみに私は【南雲薫】の占いツクールを書いてくれると嬉しいです♪♪ (2014年3月31日 9時) (レス) id: 6ae65de84b (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 玲名さん» お世辞でも嬉しいです!!僕はとにかく小説を書くとき、いつも読者様たちの立場になったつもりで「どう書けば伝わるか」を考えながら書いています♪とはいっても、僕より素晴らしい作者様たちはたくさんいますが… (2013年12月16日 21時) (レス) id: 806d6ba1fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2013年2月3日 22時

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