【薄桜鬼】～美男剣士は、実は女？～惨 (ページ42)

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百四十一話　藤堂とは、しばし… ページ42

A「そうか…
　もう京を発ったのだな」

今、平助は京にいない。

蛤御門にて成果を修め、
新選組の警護地が増えたために
新たに隊士を募ることとした。

そこで近藤は、腕の立つ剣客であるとともに
優れた論客である伊東甲子太郎に目を付け
彼と同門の平助が橋渡し役となり江戸へ向かう。

合わせて大規模な隊士募集をするので
帰ってくるのは当分先になる。

新八「なんだー？
　お子様仲間がいなくて寂しいのか？」

A「誰がお子様だ！？
　……あれだけ陽気な奴がいなければ
　多少は物足りなかろう」

──つまりは寂しい。

左之助「平助に聞かせてやりてーな。
　帰ってきたらみんなで飲もうぜ」

新八「つーか…Aは
　結局一杯も飲まなかったな」

左之助「下戸っつったがそんな飲めねーのか？」

A「友人には……少し飲んだだけで
　所構わず眠ってしまい迷惑だから
　身内の前以外では飲むなと言われてる。
　…確かに、飲んで気付くといつも布団の中だ」

風間家では一切飲んだことはなく、
千の前でだけ何度か酒を酌み交わした。

私以外と飲むなと強く言われて
機会もなく、Aは従っている。

左之助「なら可愛いもんじゃねーか！
　俺らならAが寝ちまっても
　軽々と運んでやるし」

新八「おうよ！土方さんと
　どっちが弱いのか見物だな」

A「副長は下戸なのか？
　お強く見えるのに、それは意外だ…」

今までどこか遠くに感じていたが
少し親近感が湧く。

ちらほら言葉を交わして屯所へ向かいながら
Aはおもむろに
のどに引っかかっていた疑問を口にする。

A「なあ、永倉。
　俺らは総長に謀られたとは思わぬか？」

新八「あ？どういうこった？」

A「考えてもみろ。飲み屋の店主は
　近頃この辺で浪士が悪さをしてると言い、
　総長がお前にあの店を勧め…俺が絡まれた。
　……全てはあの人の手の上なのだろう」

新八「あ……なるほど」

左之助「まったく…山南さんらしいぜ」

そんな企ても彼らには慣れた日常のようだ。

A「あの人だけは敵に回したくないな」

新八「よく分かってんな！けどよぉ…
　Aはあの人から可愛がられてる方だぜ？
　お前の前じゃ毒少なめだ」

A「毒は……あることが前提か」

左之助「トリカブトと鈴蘭くらいの差だな」

A「両方死に至る猛毒ではないか！？」

彼女の驚きの叫びが
閑散とした闇夜に響き渡る。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

続く