【薄桜鬼】～美男剣士は、実は女？～惨 (ページ37)

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百三十六話　この関係性は… ページ37

―――――……

―――…

そして、非番の日。

A「はぁっ……あいつらに
　俺はどう見えているのだろう？」

新八との約束を果たすべく
女人の装いをして鏡の前でぽつりと呟く。

武者修行の最中に
己の男装を暴かれたことなどなかった。

ゆえに、すっかり自信がついていたが
慢心だったやもしれない。

A (同僚の男と接するにしては
　過保護な気がするが、女扱いというには
　稽古では真剣に手合わせて互いに遠慮はない)

以前、組み手で押し倒したことに焦り
約一名逃亡したことはあったが…例外で。

ふと、つい先程山崎から
「雪村くんと一緒に食べなさい」と
渡された煎餅がAの視界に入る。

あの一件で、彼からは完全に
大人になった気でいる世間知らずの幼子と
認識されてしまったようだ。

A「……もしかして、子供扱い？」

散りばめられた手掛かりからそう結論が出る。

それだけでは
説明しきれない扱いを受けているが
そこまで彼女の考えは及ばない。

幹部らもAを武士として一目置くも
時折見せる幼さや中性的な魅力に
日々、当惑してるのだから仕方ない。

結局のところ、彼らとの関係は
“同僚”以外に名付けようがないのだ。

山南「おや？その恰好ということは
　今日が永倉くんと飲みに行く日ですか？」

A「山南総長…！」

日が傾き始めた夕暮れ時──…

気配を極限まで消して
一気に廊下を駆け抜けようとした
Aの足が彼の登場で止まる。

A「ご存知でしたか……
　勢いとはいえ交わした誓いは守る主義です。
　永倉の愚痴でも聞いてやりますよ」

山南「それはそれは…
　土産話を楽しみにしてます」

A「は、はい…」

何か引っかかる言い回しだったが、
Aは足早にその場を後にした。

A「待たせたな、永倉」

新八「うおっ？！
　やっぱり…A、なんだな…？」

門に体を預けて待ち惚ける
新八に声をかけるとその肩が盛大に跳ねた。

名を呼ぶ声も不安げで確信が持てぬようだ。

A「すでに知れたことだろう？」

新八「そうだけどよぉ…うーん……
　あのときとは少し雰囲気が違うな…」

A「表情の違いだろ？……ほら」

ふわ…っ

頭に千鶴を浮かべて和むと
Aは蕾が花開くように和らげに微笑む。

新八「うぐっ……めちゃくちゃ好みだ…！」

A「お前……悪い女に騙されるなよ」

親切心から思わずそう忠告する。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

続く