【薄桜鬼】～美男剣士は、実は女？～惨 (ページ4)

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百三話　皆が帰ってきた… ページ4

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左之助「平助のやつ最近どうしたんだ」

平助の苦悩は、
皆が長州征伐から帰還しても続いていた。

その違和感を感じとって
勝手場で調理に勤しむAに
左之助がそう問いかける。

A「実は、留守番中に
　稽古に付き合って貰ったのだが……
　強く投げ飛ばして嫌われたのやもしれん」

新八「んなことであいつが
　お前を嫌うとは思えねーが？」

ひょいっと目の前の皿から
おかずをつまんで新八も口を挟む。

A「しかし……あの組み手以来
　顔を合わせてもすぐに逃げられてしまう」

真剣な面持ちで返答しながら、
新八のその手をバシッと叩いて
Aはつまみ食いの牽制をした。

「いてっ」と小さく声があがる。

左之助「ちなみに…
　組み手の稽古ってどんな流れで？」

その問いに調理の手を休めることなく
Aは順を追って説明した。

A「…──という経緯で、
　突然大声をあげて走り去ってしまった」

左之助「(平助の奴…こじらせなきゃ良いが)
　…………Aは末恐ろしいなぁ…」

新八「急に腹でも痛くなったんじゃねーか？」

いろいろと察した左之助とは打って変わり
新八は懲りずに次のおかずを狙いながら
軽口で答える。

しかし、Aが手にした包丁を
ギラリと光らせて眼光を鋭くしたために
危機感からその手は引っ込められた。

A「そうだろうか……？
　あっ千鶴！もう大丈夫か？」

そこへ千鶴が通りかかって
嬉しそうにAが声をかける。

実は、彼女は先の遠征で
右の二の腕に傷を負ったのだ。

包帯を巻いて帰ってきた
彼女を目の当たりにして
Aが大騒ぎしたのは想像に難くない。

千鶴「っ……こ、こんなのかすり傷ですから」

そのばつの悪そうな彼女の表情に
Aは今更ながら気付く。

千鶴は鬼であるがゆえに
傷はたちどころに治るということに。

Aは早乙女家の鬼の特徴として
己が怪我しても人と変わらぬ回復速度のため
そのことを見落としていた。

A「……傷はいずれ治るにしても
　俺は千鶴の心が心配なんだ。怖かったろ？」

自分が鬼という認識のない千鶴は
己の驚異的な回復力をどう思っているのだろう。

周りに知られたときの反応が怖いのやもしれぬ。

そう思って、Aは調理の手を止め
彼女の手をきゅっと握った。

千鶴「Aさん…！」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

続く