百十八話 知らなかったのだ… ページ19
そして、
食事を終えて店を出て──…
A「……ほんで、烝はん。
先程の妙に生温かい周りの視線やら…
いろいろと、どういうことですぅ」
日が傾いてきた夕暮れ時、
計画通りにそろそろ山崎と別れて
一人になろうと思うものの……
その前にどうしても解決したいと思う。
Aは茜色に染まる町並みを歩きながら
ずっと気になっていた
蕎麦屋でのやりとりの意味を彼に訊ねた。
山崎「きみは……っ!
……本当に分からないのか?」
A「無学ですんまへんなぁ…
(そんなに非常識な発言だったのか…)」
しかしながらも、
周りの連中の視線は優しげに感じた。
純粋に学ぶ姿勢と、曇りのない瞳──…
その純真な心根に、山崎は一瞬
話して良いものかと躊躇いを見せるものの
やがて観念したように口を開いた。
山崎「……蕎麦屋の二階などは
飲食とは違った用途でも開放されている」
A「それは初耳やわぁ」
山崎「つ、つまりは……男女の…
……情事の場として…」
A「ぅえ…っ!!」
途端に頬を赤くしてAは
これまで己がした無自覚の発言と
周りの視線を思い返す。
あの視線は、
まだ事に及んでいない初々しい男女を
微笑ましく見守るものであったのか、と。
──バッ!
A「……それは、常識なのか…?
(いたたまれなくて山崎殿の顔が見れん)」
顔を両手で覆ってAが小声で問う。
表情も感情も忙しなくて
もはや口調を取り繕う余裕などない。
山崎「少なくとも十五を過ぎれば
男ならば自然と知るものかと…」
A「すまん……そちら方面の知識は皆無で」
というのも、十四まで風間家にて
千景が「Aには不要な低俗な知識」と、
情報を遮断していたことが大きい。
こう見えても、生粋の箱入り娘なのだ。
しかし──…
その判断が後に己の首を絞めようとは
当時の千景は知る由もない。
山崎「まあ、俺が年長ゆえの
要らん雑学の一つと思って良い」
動揺でAが震えるたびに
頭の簪がゆらゆらと不規則に揺れる。
その奏でられた旋律が
妙に愛らしくて山崎は密かに和んだ。
A「お気遣い痛み入る。
山崎殿は俺と歳もそう変わらぬと思うが…」
山崎「……俺は局長と同い年だ」
A「う…嘘だろっ!!?」
これが、彼女の今日一番の驚きだった。
**********
続く
ラッキー人物
原田左之助 夜になかなか寝付けなかったら添い寝してくれて…キャッ
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亜紀野ユキ(プロフ) - 美憂さん» 嬉しいです!!(*^ω^) (2021年10月28日 22時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
美憂(プロフ) - アニメにハマりこの作品にもハマってます! (2021年10月28日 21時) (レス) @page50 id: 35846edb09 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 夜桜桜愛さん» どうも(*´∀`)キャッ (2021年9月16日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
夜桜桜愛(プロフ) - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2021年9月16日 6時) (レス) id: 612a16ad5c (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 沖田めぐらさん» どうもデス(*´∀`)ノシ (2021年9月14日 18時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2021年5月29日 0時