【薄桜鬼】～美男剣士は、実は女？～惨 (ページ17)

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百十六話　追い詰められて… ページ17

A「……うちの顔に
　何かついてますやろかぁ」

平助が自分から視線を外さず
驚愕の表情となるのでAは首を傾げた。

今になって、自分だと
見破られてしまったのだろうか。

…────ならば、いったいどこで…？

……と、胸が早鐘の如く鳴り響く。

平助「そ、の……簪…っ」

A「あ…(なるほど…買った本人が
　簪の色形を覚えていない道理はないか)」

震える声にAはその心中を察した。

大量生産の現代の世と違い
当時の装飾品の類いは職人の手作りが主流。

そんな一期一会の中で、
自ら選び贈ったものと全く同じ簪と出会えば
平助が戸惑うのも当然のこと。

新八「おい、平助！なんでてめぇまで
　お嬢さんに熱い視線送ってんだよ！
　このお嬢さんにはもう
　好い人がいるっつってんだろうが！」

平助「いや…そんなんじゃなくてさ……」

左之助「はは～ん？なるほどなぁ…」

平助とAを交互に見て
左之助は得心がいったと言わんばかりに
口元を緩める。

左之助「そういやお嬢さんの顔立ち…
　どことなくAに似てんだよなー平助？
　そりゃあ目を外せないわけだな」

A「っ……！！」

づいっと近付いた左之助の整った顔に
息を詰まらせて身構える。

真綿で首を絞められるかのように
じわじわと追い詰められていき
全身が汗ばむのを体感する。

これ以上三人といては
ボロが出て見破られること必至だ。

新八「おい左之。お前の目は腐ってんのか？
　あの男前で物騒なちびっこと
　このたおやかな大和撫子の何が似てるって？」

…────ピキィン…！

A (物騒なちびっこ……だと！？
　この図体ばかりご立派な脳筋馬鹿め…！)

本人不在と油断して
さらっと紡がれた彼女にとっての禁句に
わなわなとAの肩が怒りで震えだす。

固くその拳が握られた。

すると──……

島田「お、お三方！急ぎお伝えしたいことが…
　今すぐこちらへお越しください…！！」

そこへ、今までずっと
様子を窺っていた島田が助けに入る。

彼自身はできることならば
表に出ないで済めば良いと考えていたが、
さすがに口を出さずにはいられなかった。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

続く