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百十二話 囮となり得ますか… ページ13

──スッ…


幸いにも誰ともすれ違うことなく
羽織を被ったままで
再び皆のいる部屋へと入る。


A「お待たせ致しました。
 お目汚しでしょうが、
 支度が済み参上つかまつりました」


土方「いや…此方が頼んでることだ。
 (そもそも早乙女の顔立ちなら
 ひでぇことにはならねぇと思うが…)」


A「……痛み入ります。
 では、少女たちの救出へ参りましょう!」


フサァ…


強く拳を握りしめてAは
被っていた羽織を剥ぎ取って
彼らと正面から顔をつき合わせた。

その刹那──…


「「「──!!?」」」


途端に息を詰まらせて皆の表情が強張る。


A「……申し訳ありません。
 用意された道具ではこれが限界で
 あまり変わり映えしませんが…」


その空気に居心地の悪さを覚え
視線を落としAは自嘲気味に苦笑した。

男装に慣れた自分には無理な役目かと。


土方「いや…(予想以上に完璧な仕上がりだ)」


A「しかし…!必ずや任務を
 全うして見せます!!だから…っ」


自分のなけなしの女らしさを振り絞ってでも
少女達のために成し遂げねばならない。

そう思い、声を張ると──…


山南「早乙女くんの女装は問題ありませんよ。
 しかし…事件とは無縁の厄介事に
 巻き込まれるおそれが高まりますね…」


山南がそう言って山崎へと視線を向ける。


山崎「はっ!我々も彼を全力で援護します!」


かくして、Aと山崎、島田は
裏門から密かに屯所を出ることとなり──…


山南「早乙女くん、
 羽織はこちらで預かりましょう」


A「あ…そうですね。
 よろしくお願いします、山南総長」


部屋を出てから再び頭から被っていた
羽織を山南へと渡す。


山南「なので、きちんと帰って来るのですよ」


A「はいっ!」


そっと髪に触れ、少し曲がった簪を
元の位置へと戻しながら
彼が言うとAは力一杯返事した。


近藤「うむ…っやはり心配だな……」


娘を戦場へ送るような心境で
近藤が腕を組みながら
苦虫を噛み潰したような顔になる。

華奢で可憐な少女にしか見えない
今のAを前にしては致し方ない。


土方「あんたがそんな顔をしちゃあ
 早乙女まで不安になっちまうだろ。
 ……あのときの茶番劇のように頼むぜ」


A「必ずやご期待に応えます!」


緊張を解そうとする
土方の不器用な優しさを察して背筋を伸ばし
茎のしゃんとした花の如く凛然と頷く。



**********


続く

百十三話 演じて見せよう…→←百十一話 俺にとって千は…


ラッキー人物

原田左之助 夜になかなか寝付けなかったら添い寝してくれて…キャッ


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亜紀野ユキ(プロフ) - 美憂さん» 嬉しいです!!(*^ω^) (2021年10月28日 22時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
美憂(プロフ) - アニメにハマりこの作品にもハマってます! (2021年10月28日 21時) (レス) @page50 id: 35846edb09 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 夜桜桜愛さん» どうも(*´∀`)キャッ (2021年9月16日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
夜桜桜愛(プロフ) - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2021年9月16日 6時) (レス) id: 612a16ad5c (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 沖田めぐらさん» どうもデス(*´∀`)ノシ (2021年9月14日 18時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2021年5月29日 0時

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