【鬼滅の刃】人生ハードモードでも貴方の生存ルート追い求めます！【煉獄杏寿郎】

三十三話　主人公と関わったら ページ35

「(すごく甘い匂いがする…)
　お姉ちゃんは何してるの？」


お姉ちゃん…だと！？
何かに目覚めそうな甘美な響きだ。


「私はね、鍼灸医…お医者さんとして
　腕を磨くために旅してるの」


「じゃあ…おれの父さんを治して！
　身体弱くて心配なの！」


一生懸命そう言う炭治郎が
すごく可愛かったけど…私は息が詰まった。

もし──炭治郎の…主人公の
運命を変えてしまったら
これから先の展開がどうなってしまうかと。


もし…お父さんの炭十郎さんの病が治ったら？


もし…無惨の襲撃を防いで家族の死と
禰豆子ちゃんが鬼になるのを回避したら？


きっと──……

原作の根本を揺るがす
大きな歪みを生んでしまう…。


そうしたら、無惨を倒すことも…

煉獄さんが幸せになるのも…

本来あるはずだった他のみんなの幸せも……


私のせいで潰してしまうかもしれない。


「お姉ちゃん…どうしたの？」


「なんでもないの…」


「でも…苦しくて泣きそうな匂いがするよ」


あ、そうだった……炭治郎は鼻が良いから
感情を読み取れちゃうんだね。


もちろん感情で突っ走ったら……助けたい…！！

でも、他ならぬ主人公の運命を変えたら
原作知識が意味を持たなくなって……


「……───苦しい…っ」


目の前の小さな男の子が
これから経験するであろう出来事を思うと
涙が出そうになる。

それを助けられる力が私にはあるのに
助けていいのかがわからない。


そして、原作のために
この子の家族を見殺しにしようとしてると
思うと自分を嫌いになる。

私はその場にうずくまって視界を閉ざした。


「(痛くて苦しそうな匂い……)
　お姉ちゃん…泣かないで。
　具合悪いならおれのうちにきていいよ」


背中をそっと撫でてくれる炭治郎に
私の涙腺が完全に崩壊した。


「うん……ありがと…っ」


お言葉に甘えて今日は竈門家にお邪魔して
珠世さんたちに相談しよう。

バカが頭使っても
バカなことしか浮かばないもん。


「妹ちゃんのおもちゃを拾ってから
　一緒におうちに帰ろっか？」


「うん！」


涙を拭って笑うと、つられて炭治郎も笑う。

小さなその手を握って
彼の鼻を頼りに私達は夜の山道を歩いた。


その後、無事におもちゃの
でんでん太鼓を見つけて竈門家にたどり着く。


そういえば……

那田蜘蛛山のとき累と対峙して
炭治郎が見た走馬灯の中に
でんでん太鼓を持ってる禰豆子ちゃんいたなぁ…


今は、その時期なのかな？



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊


続く

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