四十一話 とある煉獄家一日 ページ43
【目線なし】
これは、煉獄家のとある一日である。
「母上!あの子からの手紙ですか?」
縁側に腰を掛けて穏やかな表情で
手紙を読む母の瑠火に
はきはきと杏寿郎が問いかける。
彼もまた──…
この三年で成長し無事に十歳となり、
弟の千寿郎も四歳となった。
「ええ、Aさんは六歳となって
少しお洒落に目覚めたそうですよ」
「お洒落…ですか?」
「はい、この利梵(りぼん)と同じものを
いたく気に入ったそうで
これから肌身離さず髪につけるそうです」
そう言う瑠火の手元には白地に
朱と紅の色が波打つ利梵が握られていた。
二つ買ったので、一つは瑠火にと
Aから送られたものだ。
「この色……!
父上の…炎柱の羽織の柄によく似てます」
「果たして……父上の色でしょうか」
杏寿郎が少々複雑そうな顔をする中、
瑠火は含みのある笑みをこぼした。
その脳裏には、一度だけ見た
もしもの未来の光景がぼんやりと浮かぶ。
代々受け継がれる炎柱の羽織を纏い
勇ましく戦う杏寿郎のあの姿が。
「それはどういう…」
「……女同士の秘密です」
女の勘で感じ取ったAの恋心は
瑠火の胸の内に秘める心づもりだ。
けれども、いつか彼女とは母子のように
笑みをこぼして語り合いたいとも思う。
そこへ──…
「ただいま戻った」
父の槇寿郎が柱合会議から帰ってきた。
いつもならば笑顔で出迎えるが、
今だけはその纏った羽織を見て
杏寿郎は不満げに頬を膨らませる。
「……お帰りなさい…父上」
ぺこりと頭を下げて去っていく
その後ろ姿に槇寿郎は首をかしげた。
「…杏寿郎は何かあったのか?」
「さあ……越えるべき壁を
たった今見つけたのでしょうか」
妻の言葉の意図がわからず
きょとんと目を丸める
その様に瑠火は穏やかな心地となる。
この何気ない幸せが
いつまでも続きますように…と。
「そうだ……帰りがけに
あの少年の様子を見てきたぞ」
「どうでしたか?」
預言の通りにこの数年の間に
槇寿郎は蛇型の鬼と
それの恩恵を受ける女系一族と遭遇した。
けして善人とは言えぬ人々だったが、
女児と男児の二名以外は
皆死に絶えたことに彼は胸を痛めた。
そして、Aの言いつけ通り
男児を女児と会わすことなく
少年──伊黒小芭内は
今、鬼殺隊の元で保護されている。
それは──…
あまりに小さな変化だが、
たしかに一つの悲劇を回避した…やもしれない。
**********
続く
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亜紀野ユキ(プロフ) - 茨の谷の第2王子(ヲタク)←王子がそれでいいのかさん» そちらもご閲覧ありがとうございます(*^ω^) (2022年10月26日 14時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
茨の谷の第2王子(ヲタク)←王子がそれでいいのか - リボーンの作品書いてたの作者様だったのですね!あの作品とても面白くて好きです! (2022年9月28日 22時) (レス) id: 304b99e4d1 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - Zxcvbnm9090さん» (*´∀`*)ポッ…ありがとうございます!!頑張りますb (2021年11月20日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
Zxcvbnm9090(プロフ) - 鬼設定がまず面白い上に主人公のキャラが好きです!!推しのために貢ぐ笑最高でした!これからも楽しみにしてます!! (2021年11月20日 9時) (レス) @page47 id: 2e6009ddad (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - フランとベルさん» ありがとうございます(*´ω`*)テレッ (2021年11月13日 7時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2021年9月10日 17時