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祖母の結婚指輪についた小さなダイヤモンドを私は思い出していた。
どの角度にしても光を反射するあの宝石。
特別にと指にはめさせてもらったあの指輪を思い出して、少し目頭が熱くなる。
「あんまり見られると恥ずかしいな〜、君、なんて言うの?」
「...へ?」
「名前だよ!な ま え !ここの島の人なの?」
「あっ、はい、すみません...。神宮寺(じんぐうじ)Aと申します...」
「じゃあAちゃんだね!お世話になったついでで悪いんだけど、数日泊めてくれな〜い?」
目の前の命の恩人は上目遣いでそう言う。
知らない男を家に泊めていいものなのか...
ましてや叔父でさえあんなことをするのだ、正直信じられない
でも何故だろうか、命の恩人だからだろうか、とても心が安心すると同時に、その蒼い瞳で見つめられると何も言えなくなってしまった...。
初対面でこれはいけない、淑女たるもの常に警戒はしなくてはならない
だが...
だが...
「そうだな〜、確かに難しいよね、じゃあ近くに宿とかない?」
近くに宿...そしてこの島にはだれも私の味方は居ない
それなら知らないこの人といても同じなのではないか
一人でいるとまた何をされるか分からない、私が島に来ていることはきっと皆把握しているだろう
それに──────
消えてしまった叔父について不審に思うかもしれない
もしそうなれば私は─────
「いえ!是非とも泊まっていらしてください!さっそく布団を用意してきますので!」
そう言い、勢いよく立ち上がると机に置いていた湯のみが倒れた。
ぬるいお茶が机に広がっていく。
「あちゃー」
「あっすみません!今拭きますので!!」
私は気が動転していた。
あたふたとなにか拭くものを取りに行こうとすると、口に何かに抑えられてしまう。
「!?」
五条さんが私の口を手で抑え、後ろから私の体を抱き、私ごと一瞬で食器棚の影に身を隠した。
その時、勝手口の方からガチャリと音がした。
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作者名:あきの | 作成日時:2023年9月17日 21時