二百二十六話 あの日々は… ページ32
───ダンッ
「いっ…」
ぽっくりと呼ばれる遊女さんの履く
底の厚い下駄で手を踏まれ、顔をしかめた。
美女にハイヒールで踏まれるのは
一定数の方々にとっては
ご褒美だけど私には痛みでしかない。
「ほら…人はあんなに弱いのよ。
味方なんてして後悔したでしょ」
「っ…後悔なんてしません!」
ぐりぐりと踏まれながらも
頭上からかけられた冷たい声に即答する。
けど、怖くて顔が上げられない。
「いつまでそう言ってられるのかしら……」
恐怖心を煽るように帯が頬を撫でて
再び刻まれる想像が浮かぶ。
ただでさえまだ胴体くっついてないのに…!
「鬼同士の戦いは不毛だからやめましょう」
原作でねこちゃんと戦ったときは
さっさと帯に仕舞おうとしてた墮姫様。
けど、ペットの躾みたいなカンジか
私はなんだかいじめられてる気がする。
強い者同士の戦いは白熱してカッコいいけど
弱い者いじめはよくない!
経験値なんてほとんど稼げないぞ!!
「間違いを認めるまで絶対やめない…っ」
「え…」
震えるその声に不意をつかれる。
───ドカ…ッ
ようやく胴体がくっついた感覚がすると
墮姫様が私の脇腹を軽く蹴って
うつ伏せだったのがあお向けになった。
そこで、やっと思い違いをしてたと気付く。
容赦なく真っ二つにしたし
彼女にとって私はどうでもいい存在と思った。
───けど、違った。
興味をなくせないくらい好かれていたらしい。
逃がさぬようにと
私に馬乗りになった彼女の瞳から溢れて
頬に当たる大粒の涙がそう物語ってる。
* * *
【目線なし】
「でも……やっぱり好きだなぁ」
長い回想を経て、
墮姫とAはそれぞれの思いから涙を溢し
互いから視線を逸らせずにいた。
墮姫は──…
Aに執着してると認めたくないのに
いざ手から離れるとなり
どうすればいいかわからなくなった。
こんなときでも好きと言うのを見て
いよいよ何もできなくなる。
Aは──…
己の役目を理解しているけど
目の前の“好き”に正直に行動した。
一方通行でよかったのに
いつからか泣かしてしまうほど墮姫からも
好かれていたのが純粋に嬉しい。
生まれも、育ちも、境遇も…全然違う二人。
けれど、寄せ木細工の一部のように
ともに過ごしたあの日々は
妙に収まりのいい居心地の良さだった。
**********
続く
煉獄さんコレクション
煉獄先生 歴史と教育への熱心な姿勢にうっとり!黒板じゃなくて先生だけを見つめちゃうと怒られるよ
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亜紀野ユキ(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます!続編もどうぞよろしく(^-^)/ (6月2日 0時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 久しぶりに作品見に来たらたくさん更新されててめっちゃ嬉しかったです!堕姫ちゃんとの関係のところで涙出ました...知らぬ知らぬうちに関係が深まっていって...(泣)来世のお話もすっごく良かったです。みんな幸せになって欲しいな...この作品をずっと応援してます! (6月1日 19時) (レス) @page40 id: 2307c0fefd (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - みっささん» 嬉しいです!近日中にまた更新します_〆(゚▽゚*) (5月8日 18時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
みっさ - 初コメ失礼します!面白くて優しくて可愛いヒロインちゃんって神では!???何時も楽しく見させていただいてます!ゆっくりでいいので更新がんばってください! (5月8日 16時) (レス) @page47 id: 0ca1847e23 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - あさん» 頑張ります(〃ω〃)ポッ (5月8日 1時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2023年2月1日 16時