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二百二十三話 その裏側で… ページ29

京極屋では、


「なあ、お三津。あの子がきてから
 蕨姫花魁が丸くなったと思わないか」


帳簿をめくりながらそろばんを弾き
楼主が妻の三津に向かって呟いた。

それを受けて、僅かに瞳を揺らし
傍らで縫い物をしていた手が止まる。


「……急にどうしたんだい」


「あの子といると蕨姫も機嫌がいい。
 このまま居着いてくれたら…と」


温かい心根が周りへ影響するのなら
Aの鍼灸の腕を見込んで
廓の中に診療所を設けるのもやぶさかではない。


「無理だよ」


しかし、三津は首を横に振った。

ただの性悪ならば
そんな未来もあり得たやもしれぬが
叶わないと彼女は知ってる。


“───お前はグシャッと転落死。
 さよなら、お三津”


脳裏に浮かぶのはAに
包丁を奪われた日に見た妙に生々しい夢。

止められなければああなっていたのだろう。


「また人が消えたんだよ…!
 早くあの子を逃がしてやらないと…」


「ど…どうしたんだ……っ」


狼狽する妻の隣に移動して背をさする。

しかし、


「善子と雛鶴はどうした。簡潔に答えろ。
 問い返すことは許さない」


直後に感じる喉元に触れる冷たい感触と
背後から聞こえる声に
冷や汗が滲み、楼主は息が詰まった。

激しい動悸を抑えてゆっくり言葉を紡ぐ。


「善子は消えた…
 雛鶴は病気になって切見世へ…」


「心当たりのあることを全て話せ。
 怪しいのは誰だ」


「蕨姫という花魁だよ。
 日の当たらない北側の部屋にいる。
 可愛い鍼灸医を侍らせてね」


「鍼灸医…だと?」


なんと答えるべきか言い淀む楼主に代わり
意を決して三津が口を開いた。

それにぴくっと背後の天元の眉が動く。


「あの子が危ないんだよ!
 早く解放しておくれ…っ」


嘆願と同時に振り向くが
刃を突きつけた人物はすでに消えていた。

残された三津はきゅっと拳を握る。


(あんたが何者かなんてどうでもいい…
 ただ無事でいておくれ)


不安で震える肩を楼主がそっと抱いた。


一方、


「最初は気付きませんでしたがあの子です
 昔…里で会った女の子が
 ここを訪れて蕨姫花魁に囚われました…っ」


切見世にて雛鶴と再会を果たし
もたらされた情報に天元は頭を抱える。


(あのアホがなんでいんだよ?
 何かあったら煉獄に合わす顔ねぇだろ!)


都合がつけば連れてくるつもりだったが
少女はすでにここにいた。

───人のため鬼の元にずっと。



**********


続く

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煉獄さんコレクション

煉獄先生 歴史と教育への熱心な姿勢にうっとり!黒板じゃなくて先生だけを見つめちゃうと怒られるよ


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亜紀野ユキ(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます!続編もどうぞよろしく(^-^)/ (6月2日 0時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 久しぶりに作品見に来たらたくさん更新されててめっちゃ嬉しかったです!堕姫ちゃんとの関係のところで涙出ました...知らぬ知らぬうちに関係が深まっていって...(泣)来世のお話もすっごく良かったです。みんな幸せになって欲しいな...この作品をずっと応援してます! (6月1日 19時) (レス) @page40 id: 2307c0fefd (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - みっささん» 嬉しいです!近日中にまた更新します_〆(゚▽゚*) (5月8日 18時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
みっさ - 初コメ失礼します!面白くて優しくて可愛いヒロインちゃんって神では!???何時も楽しく見させていただいてます!ゆっくりでいいので更新がんばってください! (5月8日 16時) (レス) @page47 id: 0ca1847e23 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - あさん» 頑張ります(〃ω〃)ポッ (5月8日 1時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2023年2月1日 16時

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