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二百二十一話 明日の今頃は… ページ27

部屋に二人きりで残され
堕姫が思案顔になる。


(あのガキ…この感触からすると軽症だね。
 失神はしているけれども
 受け身を取りやがった…一般人じゃない)


その傍らでAは黙々と後片付けする。

と言っても、アイテムボックスを用いて
一度部屋のものを全て仕舞い
必要なものを取り出すだけの単純作業だ。


「よしっ…お待たせしました。
 片付けが済みましたよ」


「お前は気付いたか?」


「えっと……何にですか…?」


唐突に問われて目を丸める。


「ふふっ…やっぱり馬鹿ね。
 あの不細工は鬼殺隊よ。
 柱のような実力はないけど」


その言葉にAは息を飲んだ。

原作通りとは言え
これから善逸が危ない目に遭うことに
漠然と不安になり身体が震える。

それが堕姫の目には
鬼狩りに怯えているように映った。


「飼い主のそばを離れるんじゃないよ。
 うっかり狩られないようにね」


戯れにAのあごを持ち上げて
蠱惑的な微笑を浮かべて囁く。

守ると言われたかのようで顔が熱い。


「どう、して…生意気にも意見したのに
 罰を与えないのですか?」


“どうして”とは堕姫こそ聞きたい。

不遜な態度を取るのなら
どちらが上かわからせれば良いが
元より従順なこれをどうしろと言う。


「……単なる気紛れよ」


ただ、傷付けたくなかった。

ふいに浮かんだ感情をかき消すように
顔を背けて歩き出す。



* * *



「どんどんいらっしゃい。
 皆殺しにして喰ってあげる」


小指で紅を塗りながら上機嫌に笑う。

その美しくも残酷な様に
Aがかける言葉を決めかねていると
鏡越しに目が合った。


「何見てんだ?」


「……今日もお美しいと思って。
 その紙ってなんて言うんですか?」


「紅のおさえ紙」


噛むことで口紅の余分な油分を取って
化粧を長持ちさせるおさえ紙。

それを噛む姿はとても艶やかだった。


「蕨姫様が噛んだそれ…絶対売れますね!
 名前入りで欲しいなー」


今更悪女を演じても違和感しかない。

ゆえに、純粋に目の前の萌えと向き合うと
ファンとしての願望ばかり口から出た。


「こんな紙屑くれてやる」


「わあっありがとうございます…!
 死ぬまで大事にします!」


走り書きした源氏名を指で撫でると
歓喜に震えながら
それを胸の中心に抱いて笑う。


(……ほんと馬鹿)


無邪気な笑顔を見て堕姫も目を細めた。


明日の今頃…

───二人は敵として対峙する。



**********


続く

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煉獄さんコレクション

煉獄先生 歴史と教育への熱心な姿勢にうっとり!黒板じゃなくて先生だけを見つめちゃうと怒られるよ


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亜紀野ユキ(プロフ) - ゆゆさん» ありがとうございます!続編もどうぞよろしく(^-^)/ (6月2日 0時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 久しぶりに作品見に来たらたくさん更新されててめっちゃ嬉しかったです!堕姫ちゃんとの関係のところで涙出ました...知らぬ知らぬうちに関係が深まっていって...(泣)来世のお話もすっごく良かったです。みんな幸せになって欲しいな...この作品をずっと応援してます! (6月1日 19時) (レス) @page40 id: 2307c0fefd (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - みっささん» 嬉しいです!近日中にまた更新します_〆(゚▽゚*) (5月8日 18時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
みっさ - 初コメ失礼します!面白くて優しくて可愛いヒロインちゃんって神では!???何時も楽しく見させていただいてます!ゆっくりでいいので更新がんばってください! (5月8日 16時) (レス) @page47 id: 0ca1847e23 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - あさん» 頑張ります(〃ω〃)ポッ (5月8日 1時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2023年2月1日 16時

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