百六十八話 堕ちてゆく夢の中 ページ23
【目線なし】
「夢を見ながら死ねるなんて幸せだよね」
走行中の列車にて炎柱の煉獄杏寿郎と
炭治郎、善逸、伊之助が合流してすぐに
現れた車掌が切符を切った。
それを介して魘夢の血鬼術が発動し
四人は深い眠りに堕ちてしまう。
優しくて残酷で……幸せな夢の中へと。
* * *
「というか、煉獄さんの夢の中に入った
緑の着物の三つ編みの女の子ズルくない?」
一方、林の中で待機している
やや情緒不安定なAが膝を抱えて
ぶつぶつと不満を漏らした。
これも一種の現実逃避である。
「煉獄さんと縄で繋がって
その夢を覗き見て…無意識領域まで踏み込み
あまつさえ精神の核を壊そうとして
危機を察知した彼に首を絞められるとは…!」
羨ましい…けしからん、そこ代われ…と、
髪を左右に振り乱してAが荒ぶる。
駄々をこねる幼子のように転げ回り
ひとしきり暴れたあとで
ふと虚しさを覚えて我に返った。
「そういえば……
原作と違って幸せな四人家族の彼は
どんな夢を見てるんだろ?」
大切な家族との団らんか、
さつまいもに囲まれているのか、
はたまたその両方だろうか…。
彼の今一番の幸せとは何であろう。
すっかり日の落ちた宵闇に
その笑顔を思い浮かべ彼女は祈りを捧げた。
────どうか全て上手くいきますように。
* * *
(俺は何をして……柱合会議、なのか…?)
杏寿郎が辺りを見回すと
眼下には一列に並び座る同志らの姿と
鬼殺隊本部の庭園が広がる。
本来ならば自分もそうすべきなのに
どうして一人立ち尽くしているのだろう。
───ガラ…ッ
前触れなく襖が開け放たれる。
その奥でおろおろと戸惑う少女の顔を見て
ようやくここにいる意味を思い出した。
「───お館様。失礼致します!」
ダ…ッ
「俺の名は煉獄杏寿郎!
幼い頃より君には幾度となく助けられた。
やっと会うことが叶い嬉しく思う!!」
足を強く踏み切り、少女の手を握って
思いの丈を一呼吸で言い切る。
しかし、すぐに後悔が押し寄せた。
不思議な既視感が脳裏をかすめ
こうしてはいけなかった…
もっと違う行動を取るべきであった、と。
恐怖や緊張を感じさせなければ
泣かせることも失神させることもなかったのに。
次に続く言葉が浮かばず固まっていると、
「……私も」
うつむいていた顔をゆっくりとあげ
少女が杏寿郎の目をまっすぐ見つめた。
**********
続く
ラッキーアイテム
さつまいも 煉獄さんに貢ぎましょう!!
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亜紀野ユキ(プロフ) - 桜井直(なお)さん» ありがとうございます(´ω`*)コツコツ頑張ります (2023年1月29日 12時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - 亜紀野ユキさん» ヒロイン、可愛い。。作者さんは天才!こんないいお話を!続編待ってます! (2023年1月29日 10時) (レス) @page50 id: f84b7d123d (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - 綺羅さん» わっしょいなご祝儀ですね(*´∀`)占いコーナーまでご閲覧嬉しいです (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
亜紀野ユキ(プロフ) - kanayamamoto112さん» こんな子ならストーカー気質でも推せますね(*´ω`*)ほっこり (2023年1月18日 21時) (レス) id: 737b70383c (このIDを非表示/違反報告)
綺羅(プロフ) - 尊いッ!!見ていて癒やされます、御馳走様です(笑)ご祝儀はサツマイモでも…(笑)そして占いのおはぎに笑いました(笑)一か八かでずんだにして持って行ってみます!← (2023年1月18日 21時) (レス) id: fcc9d08bef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:亜紀野ユキ | 作成日時:2022年9月7日 17時