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「 ‥‥‥そっか 」
悲鳴に近い叫びを放った俺に対して、日比谷は、落ち着いた、かつ冷静な返答をする。
なんで、わざわざそんなことを聞いてくるのだろう。
勘が鋭い日比谷なら、俺の様子がおかしいことに気づいていないはずないのに。
彼女の真意がわからなかった。
きっと、日比谷の行動に理解ができないと、そう思っていたことが日比谷に伝わったのだろう。
眉を下げて、少し困ったように笑っていた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「 それが本当なら、 」
忘れていいよ。その言葉が返ってくるのだと、漠然と思っていた。
日比谷は優しいから。
しかし、返ってきた言葉は、俺が思ってるより残酷なものだった。
「 ‥‥‥絶対、忘れないで。
‥‥私が星海を好きだということを 」
忘れないでと、忘れるなと、俺の今までの、日比谷を意識していた行いが、正しいと言われているようだった。実際、そう言っている。
「 さっきもさ、私、やめてって言ったじゃん? 」
さっき。つまり、俺が名前で呼んだときのことだろう。
「 別に嫌だったわけじゃないよ。でも、星海は名前を簡単に呼べるくらい、私のこと意識してないのかなって、虚しくなっただけ 」
「 ‥‥‥そんなつもりじゃなかった。悪い 」
「 謝らせたいわけじゃないんだってば 」
申し訳なさでいっぱいの俺に対し、日比谷は、‥‥また、困ったように笑う。
一歩距離を縮めるが、日比谷は後退ったりせず、受け入れる。
「 ‥‥‥俺は、お前を困らせることしかできねぇな 」
「 うそ、笑ってると思うけど 」
そう言って、自身の指で口角をぐっと上に上げる。
わざとらしさの抜けない笑いで、俺を慰めてくれようとする。その優しさに、また胸が痛くなった。
「 ‥‥‥ねぇ、星海 」
「 ‥‥?‥‥どうした? 」
何か言いたげな顔をして、俺の目を見た後、気まづそうに目を逸らし、下を向いた。
ゆっくりでいい、と声をかけてみたが、返事はない。
「 ‥‥‥ごめん、やっぱなんでもないや 」
そのときの、日比谷の悲しそうな顔がやけに印象に残った。
*
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( ‥‥‥‥いつも通り、幸郎と帰ってれば良かったな )
ああ、嫌だ。忘れようとしても、離れていかないこの気持ちが。
( 言えなかった )
私は欲張りだから。
“二人で話すのはこれで最後にしよう”
なんて。
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恋う。(プロフ) - Renrenさん» 誰かの生きる理由になれるような偉大な作品を書けたとは全くもって思っていませんが、少しでもあなたのためになれたなら心から嬉しいです。こちらこそコメントありがとうございます!! (2020年12月26日 10時) (レス) id: b0168ce166 (このIDを非表示/違反報告)
Renren(プロフ) - 私も、生きる意味が分からなかったけど、この小説読んで今生きる理由を見つけました。ありがとうございます (2020年12月25日 20時) (レス) id: c1d45c9094 (このIDを非表示/違反報告)
恋う。(プロフ) - まみさん» あ"り"が"と"う"ごさ"い"ま"す"!!!!!!私自身も夢主ちゃん一途すぎね?と思いながらかいてます笑笑 昼神くん救われねぇなあ‥‥(遠い目)って感じです。コメントありがとうございました!!! (2020年12月7日 6時) (レス) id: b0168ce166 (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - もう本当に好きです、、、星海くんと夢主のすれ違いがなんとも悲しいし、夢主は他の夢小説と違ってほんとに一途でとても素敵だと思います。でも自分はどうしても幸郎に感情移入してしまってなんとも辛いです、、、 これからも応援させていただいています! (2020年12月7日 0時) (レス) id: 78a66a55d1 (このIDを非表示/違反報告)
mika(プロフ) - うわぁーーーーーー……。星海くん、イケメンやわぁ。夢主ちゃん最終的に選んで欲しいけんなぁ。。 (2020年10月11日 15時) (レス) id: 4da161d36b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:恋う。 | 作成日時:2020年7月12日 18時