【男主】余 所 見 す ん な 。【栗花落カナヲ】

１４余所見 ページ17

「恋仲の人は居ないよ」

「『恋仲の人"は"』って何ですか。想い人の方はいらっしゃるって事ですか？」

うおう、何だか積極的だ。

もしかして俺、狙われてる？なんて、少し思ったが、出会ったばかりなのに惚れたりなんかしないかと自己完結した。

ところで、この質問は答えるべきか？

うーむ、美琴さん口堅そうだし、大丈夫かな..。

「..........いるよ」

悩んだ末、俺にしては少し恥ずかしそうに笑顔で言った。

そんな俺とは反対に、美琴さんは目を伏せて少し悲しそうな顔をした。

「そう、なんですか..」

「うん」

「っ、が、頑張って下さいね！さ、幸くんならきっと成功しますよ！」

「うん。ありがとう」

そのあと少し別の話をして、今回はお開きとなった。

結局奢って貰っちゃったなぁ、そんな事を考えながら帰路を辿る。

「ただいまー..？」

戸を開けてまず目に入ったのは、カナヲの姿だった。

「どした？」

「幸を待ってたの」

え、何故..？

「え何か怒ってる？」

「怒ってないよ」

じゃあ何で居るんだよ。

いや、居てくれて嬉しいよ？だけどさ、普段のカナヲだったらぜっっっったいこんなことしないし..。

何か、怒ってんのかなぁ、って思っちゃうじゃん。

「どした？」

「用は無いの。」

「ん？用は無いのに俺を待ってたの？」

「うん。あ..ダメだった？」

こてん、と効果音が付きそうな程可愛らしく首を傾けるもんだから、甘露寺さんじゃないけど、胸がきゅんとした。

「最近避けたりしてごめんね」

「はは、何のこと？もう忘れちゃったよ」

こういうのは、水に流すのが一番良いんだ。

実際に、謝ってくれた訳だし、ここで許さないのもなんだ。

「ありがとう」

カナヲは、とても綺麗な顔で笑った。

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