30話 愛 ページ32
L「さっき夜神くんと、お茶をしようと話していた所なんです。Aさんも、一緒に行きましょう？」
「え、え？」
相手に敬意を表すLの行為に、Aは驚愕して声も出せない。
どうして、私を襲わない…？
なぜΩ相手の私に、そんな、そんな人間を相手にするような、優しい目で、私を見つめてきて…
L「…夜神くんと喧嘩でもしました？」
長い沈黙が続く中、口を開いたのはLの方だった。
「…してない、し」
L「あ。もしかして、私と二人っきりで居たいんですか？」
「は、はあッ！？んなワケないでしょ！私、アンタのこと嫌いだから！二人きりで居たいとかないし！」
L「え？」
「は？」
そう怒鳴れば、理解できないとでも言いたげな男の表情に、思わずAは首を傾げる。
初めて会話をする相手に気まずさを感じながらも、Aは男と話をしようと思った。
「…え？私が、アンタに好意を抱いてると思ってるワケ？」
L「違うんですか？」
「そんな訳ないじゃん、なんでそんな妄想ができるの？」
L「妄想なんかじゃないですよ。だって私達、運命の番じゃないですか」
だからなんだ？運命の番だから、なんだというのだ。
呆れた視線を送るAに構わず、男は淡々と言葉を並べていく。
L「私、Aさんの事、とても好きですよ」
「…は？」
L「本当に愛おしいです。全てのものから、貴方を守ってあげたい」
Aは、声を漏らした。
L「一目見たときから、私はAさんに夢中です。貴方もそうですよね？だって、運命の番なんですから」
「なにを、言っている…？私、アンタに恋なんてしてないよ？」
L「運命の番同士は、出会った瞬間から恋に落ちるんです。照れ隠しでしょうか？」
「照れてないッ！アンタのこと、本当に嫌いだし！！」
L「…本気で、言ってます？」
本気だ。
Aはそんな感情を抱いた事はない。
…なにより、この男が自分に抱いている感情を知って、Aは頭がパンクしそうだった。
「嘘じゃない。…私は、アンタを愛おしいと思ったことはない」
L「…」
Lに腕を引っ張られ、目の前まで男の顔が迫ってくる。
それでも、Aは顔色一つ変えることはしなかった。
L「これでも、何も感じないんですか」
「感じないね」
Aの腕を離し、可笑しいなと呟くLに、Aは顔を歪ませる。
さっきから、運命の番、運命の番と。可笑しいのはこの男の方だろう。
コイツも、そんなくだらないものに囚われている。
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作者名：あっきー | 作成日時：2019年5月1日 12時
