11話 兄 ページ13
次の日、月と一緒に学校から下校し、いつものように自分の部屋へ直行しようとすれば、Aは後ろから腕を引っ張られた。
月「A、ちょっと」
振り向けば、真剣な顔をした月がコチラを見つめている。
はて、何か月にしたかな?なんて思いつつ、綺麗な顔の月をボンヤリと眺めていれば、月が困ったように口を開いた。
月「最近、ずっと上の空じゃない?
話してても曖昧な返事しかしないし、いつも自分の部屋にいるじゃないか。ご飯も食べに来ないし、なにかあったのか?」
「え!」
突然の話に、一瞬だけ胸が高鳴った。
声が裏返ったAを探るかのように、月がAの様子を伺っている。
月は勘が鋭い方だ。変に慌てたりしたら、怪しまれるだろう。
「いや、ちょっと今、授業でやってる所が難しくて、ずっと勉強しててさ」
月「…そうなの?」
「うん。でも大丈夫。心配させてごめんね!」
そう言うと、Aの腕を掴んだ月の手が、そっと離れていった。
納得したのかは分からないが、離してくれただけ良かった。
月「そうか。…ごめん。昔みたいに、また僕を避けているのかと思ってさ」
(昔みたいに、月を避ける…)
…あぁ、そうだ。自分だけがΩだと知った時、悔しくて悔しくって、月の顔も見ているだけで嫌になって、月を避けてた時期があったんだ。
月は何も、悪くはなかったのに。
月「A、何かあったらすぐに僕に言うんだよ。僕が助けるからね」
「…うん、ありがと、月」
なんだかAは苦しくなって、月の顔を見ることもせず、自分の部屋へと向かうのであった。
◆◆◆◆
「ッはああぁ…」
リ「お、深いため息だなぁ」
自分の部屋に入れば、当然のようにくつろいでいるリュークがそこに居た。相変わらず、手には大好物のリンゴを掴んでいる。
リ「お前の兄ちゃん、イケメンだなぁ」
「あぁ、見てたんだ?当たり前じゃん、私の双子なんだから」
リ「それに頭も良さそうだ。いつか、お前がキラだってバレるかも知れないな?」
「…あぁ、まぁなんとか隠し通すよ。私の理想の世界になるまではね」
リ「理想の世界?」
リュークが聞き返した途端、Aの瞳に光が宿る。
それが、あまりにも輝かしいものだったから、正直リュークは戸惑った。
「Ωが堂々と生きられる世界だよ!私はそんな世界を作りたい!」
リュ「な、なんでΩ?」
不思議そうに首を傾げたリュークを横目に、Aは引き出しを開ける。
88人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あっきー | 作成日時:2019年5月1日 12時