7話 決意 ページ9
「そんな、嘘でしょ…ッ!?」
思わずAは声を荒げた。
有り得ない、そんなことあるはずない、と慌ててテレビに駆け寄れば、"三人同時に心臓麻痺?"と表示されたテロップに、名前を書いた男たちの顔が画面に映し出されているではないか。
え?
…なにこれ?
「な、ななっ、なにこれぇッ…!」
恐怖のあまり、Aはへたり込んだ。
血の気が引くような感覚に見舞われながらも、恐る恐る、机の上に目をやれば、何事もなかったかように、ノートがそこにある。
ヒュッと喉が詰まった気がした。
『三人同時に心臓麻痺で死ぬなんて、そんなことあり得るんですか!?』
テレビからそんな声が聞こえてくる。
…あり得ない。三人、同時なんて!!
「このノート、本物…!?ヒッ…!」
現実的に考えて有り得ない。そう否定しようにも、Aは実際、この目で確かめてしまっている。
このノートは間違いなく人を殺せる物だと、Aは理解してしまった。
「わ、わわ、私、悪くないッ…、本当に死ぬなんて、思わないし!そ、それにコイツらは、死ぬべき人間で…ッ!死んで当然の人間、で……?」
Aはパニックに陥り、必死に自分を落ち着かせようと、己を正当化した。
こんな状況になってしまえば、こんな恐ろしい物は今すぐ手放してしまおう、と考えるのが普通の人間の思考だ。
だが、Aは違う。
「い、いや、ちょっとまって…あぁ、そうよなんで私が悪いの!?死んで当然の奴らだったじゃん!
悪い事をしなければ、私は名前なんて書かなかったし…ッ!」
Aは、普通の人とは少し違った。
少し混乱しつつ、自分の置かれた状況を落ち着いて考える。
この男たちは自業自得だ。きっと私が殺さなくても、いつか天罰が下っていたに違いない、それが今だっただけで。
それに私はこの被害者の…、Ωの救世主になれたはずでは!?
そう考えたら、心がスゥっと軽くなったような気がした。
「あぁ、そうだよね…。Ωだからって、罪は軽いと思って、襲ったんだ…。なら、今後もΩを襲うに決まってる!!」
Aは、机のノートに目をやる。
怖くない、と言ったら嘘になるけど、これは神様が私に与えてくださった希望なのだろうか?
希望…、そう。Ωに、希望を与えたい。
「…あぁ、そうだ。私が作ればいいじゃん」
Ωが、生きやすい世界を。
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作者名:あっきー | 作成日時:2019年5月1日 12時