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story19 ページ20

この胸の中の弱さを
見せられる人がきっと宝物

ーーー


車内での会話は、ほとんど平野くんが質問してくることに、私が答える感じだった。


仕事の話だったり、家族構成だったり、他にもいろんな話をたくさんした。


今日気づいたことだけど、平野くんは人の話を聞くのが上手い気がする。
話を聞き出すのが上手と言うか、気が付いたらつい喋り過ぎている自分がいた。


人の話を真っ直ぐに聞いてくれる人。


平野くんが周りの人から愛される理由がなんとなく分かる。


そして車はあっという間に私の住んでるマンションの前に到着した。





『あの、今日はありがとう。美味しいご飯もご馳走になった上に、家まで送ってもらっちゃって...』





お礼を言った私に平野くんが口にした言葉は、予想外のものだった。





「...彼氏とうまくいってんの?」





多分この時、私の顔色は変わったのかもしれない。





『急に何?笑』





今の今まで、平野くんに秀人とのこと聞かれたことなかったのに、どうして?





「この1週間、ずっと泣きそうな顔して受付けにいたから...」





どうしてこの人には、分かってしまうんだろう?





「何があったの?」





まだ自分のカバンに入ったままのあの口紅のことを言おうかと思った。


でも、





『何もないよ』





やっぱり言えない。





無意識に、カバンを持つ手に力を込めた。
平野くんは、私の嘘を見抜くかのように、鋭い視線で私から目を逸らさない。





『思い出したくないの。言葉にしたら、した分、不安になるから』





その鋭い目線に耐えきれずに、私は本音を吐き出した。





「そうやって、ずっと逃げんの?
逃げたって何の解決しないと俺は思うけど」





分かってる、そんなこと。

だけど、あの口紅のことは秀人にはそんな簡単に聞けない。





「だから、何かあったら連絡してって言ったのに...」





平野くんは呆れたように溜息をつきながらまた私を見た。





「...今回はもういい。ただ次、何かあったら絶対に俺に言って」





何一つ変わらないクールな表情。
でも、口調はいつもと違う。




本気で人の胸ん中にぶつかってくる人。






「返事は?」

『あ、はい』

「じゃあ、俺帰るわ」

『あ、うん』







そして、またいつものように目を細くして笑う彼。

何んでなんだろう?

1番好きなのは秀人なのに、秀人のはずなのに、

彼の前では、いちばん"本当の私"になってしまう。

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akimakixxx(プロフ) - kanadeさん» 私にも分かりません^^;笑 (2018年8月7日 21時) (レス) id: 85c669e5c3 (このIDを非表示/違反報告)
kanade(プロフ) - これから歩夢君とヒロインちゃんがどうなっていくのか楽しみです。 (2018年8月7日 21時) (レス) id: df4e83e4db (このIDを非表示/違反報告)
akimakixxx(プロフ) - kanadeさん» ずっと思考回路0でした(>_<;) (2018年8月7日 0時) (レス) id: 85c669e5c3 (このIDを非表示/違反報告)
kanade(プロフ) - 更新待ってました。 (2018年8月7日 0時) (レス) id: df4e83e4db (このIDを非表示/違反報告)
kanade(プロフ) - キュンキュンしながら読んでます。 (2018年8月1日 23時) (レス) id: c9d57448f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:am | 作成日時:2018年6月26日 1時

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