love at first sigh (ページ19)

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story18 ページ19

意地悪時々優しい彼。

ーーー

『じゃあ、次は私に奢らせて。あんまり高いものはご馳走できないけど...』

｢へー、次もあんの？笑｣

私の言葉にニヤッと笑う平野くん。
自分でも言ってから、あっ...と思った。
次だなんて、もう平野くんと2人で食事に行くことなんてないのに。

『あ、今の忘れて』

そう言うと、平野くんは私の言葉を無視して歩き始めてしまった。
慌てて後を追うけど、向かっているのは駅とは逆方向。

『あ、平野くん！私あっちの駅から電車に乗るから...』

｢送ってく｣

...え？

｢こっちに車止めてるから｣

『い、いいよ。電車まだ全然あるから...』

さすがに奢ってもらった上に、家まで送ってもらう訳にはいかない。

｢いいから｣

そう言って平野くんは、強引に私の腕を掴んで止めてある車の方へと歩き出した。

『ひ、平野くん！』

｢何？｣

何？じゃなくて、腕...。
周りの人に見られたりとかしたら誤解されちゃう。

『強引だね』

｢そっちは頑固だな。ここで心愛が電車に乗って何かあったら、飯に誘った俺のせいになるじゃん。そう言うのめんどくさいから｣

『分かった。じゃあ、一緒に車まで行くから、腕離して』

平野くんはジッと掴んだ腕を見て、優しく離してくれた。
またスタスタと歩き始める彼の後を追う私。

さっきまで平野くんに掴まれていた腕に、暖かい感触が残ってる。

急に男の子に触れられるなんて、絶対に嫌なはずなのに、何故なのか嫌だとは思わなかった。

それはきっと、彼が優しく掴んでくれたからかもしれない。

5分ほど歩いて、駐車場に着く。

｢乗って｣

少し大きめの四駆。
こう言う時って助手席に乗っていいの？
それともやっぱり後ろの席？

迷った挙げ句に、後部座席のドアを開けたら、運転席に既に座っていた平野くんに思いっきり冷めた目で見られた。

｢普通、助手席じゃないの？｣

『ですよね、あはっ』

とりあえず笑って誤魔化す。
そして遠慮がちに助手席のドアを開けてイスに座る。
黒の革張りのシートはとにかく座り心地が良くてちょっと感動した。

当たり前だけど、秀人の車とは違う香り。
平野くんの香りがする車内。

私の家の住所を伝えて、車が発進した。
車内では沈黙になるかと思っていたけど、意外と平野くんが話しかけてくれた。

平野くんって、もっと無口な人かと思ってたけど、今日一日で平野くんの印象が変わった。