遠い空 2 (ページ24)

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story 24 -haruki- ページ24

俺には、
この世界での、
ビジョンがない。

ーーー

｢遥輝!｣

｢知ってるよ。｣

ロッカルームで卓さんがご丁寧に、
スポーツ紙と、芸能紙を見せてきた。

｢無期限ん休業って、

Aちゃんに何かあったんやなかとか?｣

｢…知らん。｣

｢知らんってお前、

Aちゃんから何も聞いとらんのか?｣

｢…俺ら別れたから。｣

｢別れた!?お前らが!?

なして?いきなり…

あんだけAちゃんに惚れとったやなかん?｣

｢やから!

…やから終わらせた。

卓さん、俺の10年先のビジョンが見えへんねん。｣

｢ビジョン?｣

｢俺ら、スポーツ選手って、

寿命短いやん?特に野球選手って…

その後のこととか、例えば老後とか、

考えたらあいつを幸せにする自信がなくなったんや。

やから、好きの気持ちが浅いうちに別れた方が、

あいつの為になると思って…｣

｢それなら俺もや。ビジョンなんて見えん。

じゃあ、お前が言う、

そんビジョンが見えんかったら、

スポーツ選手は結婚出来んと?

杉谷とか結婚しとー奴の嫁さん皆、不幸なんか?｣

｢.....｣

｢なぁ?遥輝

お前がAちゃんから離した手、

他所ん男ん手に渡ったっちゃよかか?

もう関係なかって言うなら別によかばってん…

俺じゃなく、お前が決めることやけん。

ばってん、後悔だけは残しなしゃんなや!

逃がした魚は、何度釣ったっちゃ、もう手に入らんばい。

いつまでもお前の傍で泳ぎよーとは限らんけんね。｣

｢…卓さん、

女の寝顔見て"こいつ天使ちゃうか?"って、

思ったことある?｣

｢…お前さ?彼女おらん俺に聞く?｣

｢そうやった。笑｣

｢そうやった、違うばい!

やっと笑うたな!笑

お前はアホんみたいに笑いよーのが1番や!笑｣

｢あ、あと遥輝!

Aちゃんの幸せとか言うとったばってん、

そりゃお前が決めることじゃなくて、

Aちゃん自身が決めることや。

まずはお前が先に幸せになれ!

相手の幸せ願う前に…

そうやなかと相手も幸せに出来んばい!｣

やっぱ卓さんは卓さんやな。

"他所ん男ん手に渡ったっちゃよかか？"

よくねぇーわ！

Aの手も、足も、全部が俺のもんや。

ほんで、Aの天使な寝顔も俺だけや。