遠い空 2 (ページ19)

今日:32 hit、昨日:0 hit、合計:64,585 hit

story 19 ページ19

月より、遠くはないのにね。

ーーー

あれから何度か遥輝から、
LINEや電話はあったけど、
前ほど、LINEの数も、電話の数も、
二人の会話はだんだんと減ってきた。

｢遥輝から連絡はあったか?｣

『ない。』

｢まぁ今は苦しい時期だからな…｣

『…うん。』

｢と言うか明日ゆっくり1日休め。

お前あれから帰って来て、ずっと曲作ったり、

雑誌の取材やらであまり寝てないんだろう?｣

『…私は平気。』

｢そんな風には見えないけど?｣

遥輝のチームの連敗がここずっと続いてる。
だからこそ分かる。
不器用な遥輝が私と野球を器用にこなせないこと。
そして、
そんな精神状態じゃないことぐらいも…
だから、声が聞けないのも、全部、
仕方がないことだと自分に言い聞かせてきた。

『向こうも色々あると思うし。

それに｢頑張れ｣って安易に言えへんし。

"待ってること"は出来ても｢待ってる｣って、

言うことが遥輝の負担になりそうで嫌なん。』

｢そっか。
けど、あんま無茶すんなよ!｣

『うん、ありがとう。ジョー。』

遥輝？

そっちでは何を食べ生きてる？

卓さん達とどんな話をしてる？

どんな遥輝も…

顔が見たい。声が聞きたい。

遥輝の笑ってる顔や、逞しい腕に包まれたい。

遥輝と離れて半年。

どんどん欲張りになっていく。

東京と北海道。

会いに行こうと思えばいつだって、

会いに行ける距離やけど、

｢じゃあ、また明日｣って、

笑って手を振る距離に彼はいない。

この距離に時々、負けそうになる自分がいる。

別に、月よりも遠い訳じゃないのにね？

こんなに私って弱かったっけ？

遥輝が野球選手じゃなかったらって、

何度も思った。

大きな夢なんかなくても言いたいこと言って、

いつも一緒にいられてって…

"私も東京で頑張る"

そうは言ったけど、
ホンマは強がってた。
ホンマは淋しかった。
心のどっかでは引き止めてくれること期待してた。

こうして、なかなか会えないことは、
最初から覚悟してたつもりやったけど、
半年、声聞けへんだけで不安…

私の知らない遥輝の世界のこと、
この、不安をかき消してくれるものなら、
例え歌詞が書けない私でも良かった…

遥輝とのこと思い出しては、
現在(いま)を消して、

思い出しては、
気持ちを繋いで、の繰り返しで苦しい。