story 31 ページ31
私1人じゃ、
幸せになんかなれない。
ーーー
『じゃあ、次は私に奢らせて。』
｢へー、次もあんの?笑｣
私の言葉にニヤッと笑う遥輝。
自分でも言ってから、あっ、と思った。
『あ、今の忘れて。』
｢嘘やん。笑
また食いに行けばええやん。な?｣
そう言って、
遥輝は私の言葉を無視して歩き始めてしまった。
｢送ってく。｣
そう言って遥輝は、
強引に私の腕を掴んで止めてある車の方へと歩き出した。
『は、遥輝!』
｢何?｣
何？じゃなくて、腕…
周りの人に見られたりとかしたら、
私と遥輝のこと誤解される。
『強引。』
｢そっちは頑固。
ここでAに何かあったら、
飯に誘った俺のせいになるやん。
そう言うのめんどくさいし。｣
『分かった。
じゃあ、一緒に車まで行くから、腕離して。』
遥輝はジッと掴んだ腕を見て、
優しく離してくれた。
またスタスタと歩き始める彼の後を追う私。
さっきまで遥輝に掴まれていた腕に、
暖かい感触が残ってる。
車内での会話は、
ほとんど遥輝が質問してくることに、
私が答える感じやった。
仕事の話やったり、周りの人間関係やったり、
他にもいろんな話をたくさんした。
今日気付いたことやけど、
遥輝は人の話を聞くのが上手い気がする。
話を聞き出すのが上手と言うか、
気が付いたらつい喋り過ぎている自分がいた。
人の話を真っ直ぐに聞いてくれる人。
遥輝が周りの人から愛される理由が、
なんとなく分かる。
そして車はあっという間に、
私の住んでるマンションの前に到着した。
『あの、今日はありがとう。
美味しいご飯もご馳走になった上に、
家まで送ってもらって...』
｢ふっ、謙虚になりやがって。
…明日、甲子園での試合が終わったら向こうに戻る。｣
『そっか、』
そう言って俯き、
黙り込むAを瞬きもせずに見つめてた。
今のうちに、自分の脳裏に、
自分の心の奥にAの姿を閉じ込めておきたい。
LINEの文章や電話の声だけで、
Aがどんな表情をしているか分かる様に。
『遥輝?』
｢ん?｣
『頑張れ!』
あの日私に送ってくれた言葉。
『が・ん・ば・れ !』
…頑張れ、遥輝。
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作者名：haru | 作成日時：2019年7月26日 16時
